【話題追跡】 ヘルスクレームの「切り出し」、どこまで許される?

 消費者庁は3月31日、認知機能対応の機能性表示食品のネット広告に対し、115社に一斉指導を行った。「空間認知」など、認知機能の一部に対し届出された長文のヘルスクレームの一部を切り取り「認知機能の維持」といった「認知機能全体」に効果があるかのような表示が指導対象となったが、「切り出しは、どこまで許されるのか?」。販売メーカーからは、疑問と困惑の声が出ている。消費者庁は認知機能対応の機能性表示食品のネット広告で、3事業者(3品)に景表法・健増法に基づく改善指導を行うと共に、表示が届出範囲を逸脱していたとして112事業者(128品)に健増法に基づく改善指導を行った。認知機能対応の機能性表示食品は、2月末時点で223品が販売され、約半数の製品が改善指導を受けたことになる。

 

 今回の指導に用いられた「事後チェック指針」には、広告その他の表示において、届出表示の一部を切り出して強調することで、届出された機能性の範囲を逸脱してはならない旨が記されている。業界では届出表示の全文が記載されていれば、意味を変えない範囲で省略できると理解してきた経緯があるが、今回の指導で省略の範囲は、相当厳密に狭められた。販売メーカーからは、「認知機能は試験範囲が非常に広いため、切り取り表示は範囲を逸脱してしかるべき」「消費者庁の指摘は理解できる」という意見が聞かれた一方で、「POPでは小さな面積で分かりやすいフレーズが求められる」「全文表示では、文字が小さくなり、結果として消費者にとってわかりにくいものになる」という意見も聞かれた。「怖いので今後、切り出し表示は一切使えなくなる」といった声も多数聞かれ、実際にドラッグストアグループで、認知機能関連のPOPを撤去する動きが見られた。機能性表示の届出支援を行う食品CROからは、「広告表現を見据えた届出表示のアドバイス」を行っている、という声が聞かれたが、表示の責任は販売企業にある。

 

 今回、115社もの企業が一斉指導となった背景には、事後チェック指針の判断基準が業界内に伝わっていない点が挙げられる。「切り出し表示のガイドラインを出してほしい」という声が多数の販売メーカーから聞かれた。判断基準をより明確にする取り組みが、業界から求められている。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1739号(2022.5.4)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら