【特別インタビュー】 神奈川歯科大学・副学長 槻木 恵一教授

 近年の研究で、齲蝕(虫歯)や歯周病など口腔内の乱れが、糖尿病や心疾患、がん、認知症、関節リウマチ――など、全身疾患に繋がることが徐々に明らかになってきた。口腔内の健康維持に関心が高まる中、“唾液”の役割にも注目が集まっている。唾液には、様々な有用成分が含まれ、口から侵入してくる細菌やウイルスなどの病原体から生体を防御する機能や口腔内の健康を維持する機能が備わっている。ここでは、唾液・唾液腺研究の第一人者で、“唾液ケア”を通じた疾病予防を提唱する神奈川歯科大学・副学長の槻木恵一教授に、唾液の役割から唾液ケアの実践方法、口腔と全身疾患の関係などについて話を聞いた。

 

―― 唾液の果たす役割について

 

槻木氏 唾液は99~99.5%は水分だが、残り0.5~1%には消化作用を助けるアミラーゼや抗菌作用のあるラクトフェリンやリゾチーム、粘膜保護作用に有用なムチン、修復に有用な成長因子など、多くの成分が含まれている。また唾液の働きは、食物の消化、摂食嚥下や発声のサポート、歯の再石灰化を促す、口腔内粘膜の保護や修復、口腔内の自浄作用など様々ある。なかでも私が注目しているのが、口から侵入してくる細菌やウイルスなどの病原体から生体を防御して、感染症の予防や全身の健康維持に最も重要な役割を果たす、唾液中にある免疫抗体のIgA(免疫グロブリンA)だ。

 

―― IgAを増やす“唾液ケア”について

 

槻木氏 IgAを増やすには日々の口腔ケアが重要だ。最も一般的な方法には歯磨きがあるが、歯磨きは1日2~3回程度で時間も3~5分程度となる。実はそれ以外の時間において口腔内の衛生状態を守る役割を果たしているのが唾液であり、IgAをはじめとした唾液中の成分である。そこで我々は唾液の量的・質的な向上に繋がる“唾液ケア”を推奨している。

 

 唾液ケアに有効な方法としては、①ストレッチや軽い運動を行うことで唾液量を増やす。②唾液は1日約1.5L出ているため同量の水分を補給する。1回200ccを目途にこまめに補給するのが良い。③抗酸化作用のある食物、発酵食品や食物繊維を十分に摂取する。サプリメントの場合、CoQ10やビタミンC、フコイダン、リコピンなどが唾液の分泌に良いデータが出ている。またヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸管の免疫力を向上させるが、腸管免疫と唾液腺の免疫賦活化には相関関係(腸-唾液腺相関)が働いている。④耳たぶの下辺りにある「耳下腺」と顎の下辺りの「顎下腺」をそれぞれ軽くマッサージする。特に顎下腺のマッサージはIgAが一番出るため有効だ。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1720号(2021.7.21)で
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