【学術トピックス①】 血液中のNAD合成系酵素eNAMPTのエイジングケア作用が解明

 日本医療研究開発機構(AMED)は6月14日、神戸医療産業都市推進機構、今井眞一郎博士(ワシントン大学医学部)、佐藤亜希子博士(国立長寿医療研究センター)らの研究チームが、血液中を巡っているNAD合成系酵素eNAMPTが哺乳類の老化と寿命を制御していることを解明したことを発表した。

 

 研究は、血液中を循環しているeNAMPTの加齢による変化をマウス、ヒト試験にて検証。マウスでは6~18ヵ月齢で、オスの33%、メスの74%に血液中のeNAMPT量が減少してしまうことを確認。ヒトでも同様の減少が見られ、eNAMPTの減少は哺乳類の老化過程に共通の現象である可能性が示唆された。次に老齢マウスをランダムに選び、ある一定の時点で血液中のeNAMPT量を測定し、その時点から個々の個体の余命がどのくらいあるかを検証。結果、血液中のeNAMPT量と余命の間に強い正の相関があることが明らかになり、血液循環中のeNAMPTが、老化・寿命の制御に重要な役割を果たしている可能性が強く示唆された。

 

 この結果を受け、脂肪組織でNAMPTを特異的に発現させて、血液循環中のeNAMPT量が老化しても保たれるANKIマウスを作製し、その老化形質を詳しく解析すると、ANKIマウスは24ヵ月齢の時点で、同じ月齢の対照群に比べて、血液中のeNAMPT量が3.3~3.6倍高く保たれていた。また対照群に比べて、「観覧車を回す身体活動能力が12ヵ月程若いレベルに保たれている」「身体活動能力、睡眠の質の制御に重要な視床下部内のSIRT1標的遺伝子の発現が高い」「糖刺激によるインスリン分泌能が高く、膵臓のランゲルハンス氏島の数が多い」「桿体、錐体共に網膜の視神経細胞の機能が高い」などが明らかとなった。つづく

 

 

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