特集【オーガニック&ナチュラル】 「日常使い」じわり浸透

 米国・インフォーマ社のJon Benninger氏は10月、食品開発展・オープニングスペシャルプレゼンテーション「米国の健康・栄養食品の最新トレンドと注目素材」で、米国の消費者が健康食品購入時に重視する項目について、「持続可能性」「信頼できる認証」「ゴミの減量化」「調達責任」などを挙げ、「アメリカの消費者は環境に配慮したパッケージや生産方法も重視している」と報告した。

 国連が採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、地球環境や人、社会、地域に配慮した「エシカル消費」が推進されている。開発途上国の生産者をサポートするフェアトレードをはじめ、オーガニックや地産地消の動きが世界的な潮流に。近年では、フェアトレードの進化系「レイズトレード」の取り組みも見られ始めている。栽培から製造まで全ての工程を現地で行うことで、途上国に利益をより多くもたらす新たな仕組みとして注目を集めている。

 オーガニック製品を扱う㈱創健社は10月、レイズトレード品のオーガニックチョコレートを上市した。同社によると、「取引先であるペルーのメーカーでは、チョコレートの製造を通して、現地の生産農家の生活向上に寄与する活動を行っている」といい、「オーガニック栽培に関する教育のほか、農機具や資金の貸し出し、子どもたちのための学校づくりも行っている」と説明する。

 有機食品を取り扱う小売事業者も増加傾向にある。農水省がまとめた「国内スーパーマーケットにおける各種売場の設置状況」では、約4割が有機食品コーナーを設置していることが明らかに。昨対比8.6ポイント上昇で推移していることもわかった。自然食品卸のムソー㈱は11月、有機農産物販売を本格的に開始する。同社への取材では、「専門小売店では農産物の売上が圧倒的に多い」とし、背景には「安心・安全な野菜を求める消費者が多くなっている」ことを挙げている。

 マクロビクッキーなどを手掛ける㈱ビオクラ食養本社では、産直野菜の販売を展開。同社が運営する農場では、酵素の残さを混ぜた肥料を使用するなど、自然農法による栽培に着手している。収穫日に発送する『旬の産直野菜セット7品』は“美味しい”と評判に。「届く野菜は箱が届くまでお楽しみ」というセット商品は、「発売後4 分で売り切れることもある」という。

 オーガニック専門スーパー「ビオセボン麻布十番店」では、こだわりの有機農産物を販売。「オーガニックエノキ茸は99円」――。同社・商品部マネージャーの四十八願邦子氏によれば、「政策的に安くしている側面もあるが、手に取りやすい価格帯の有機農産物も増えている」と説明する。現在は、ヴィーガン対応や肉代替え商品の品揃えも拡充。植物性100%の「ヴィーガンチーズ」「べジバーガー」などを販売している。

 フェア棚では、「プラントベースフードコーナー」も展開。最近ではクッキーやワッフルといった「ヴィーガン向けの菓子も増加傾向にある」とし、「消費者からは国産商品の要望も多い」と話す。さらに、「オープンから約3年経過した今、日常使いとしての認知も広がった」といい、「普段の食卓にあがる納豆や卵、牛乳、野菜といった商品が売れるようになった。駅構内店では、飲み物やお弁当。夕方にはベビーフードが売れる。通勤途中の利用も目立ち、都会に住む人のニーズにマッチしはじめている」と語る。

 「オーガ一ニックは海外だけのものという印象が強かったが、昨今は国内でも手に取りやすい商品が増えている」と語るのは、伊藤忠食品㈱商品本部の長田恵里奈氏。注目商材は、「プラントベースフード」を挙げ、米国では市場拡大が急速に進んでいると説明する。「腸内をきれいにする。胃腸を休めるというニーズを取り込むことができる」とし、サラダ以外の選択肢のひとつとして「今後は国内でも話題になっていく」とみる。

 同氏は、「オーガニック食品は進化している。従来は美味しくないイメージがあったが、美味しい商品も増えている」とし、価格については「高いと思われがちだが、それが安心・安全の証拠。子育て世代には選ぶ基準のひとつ」と述べている。つづく

 

 

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