特集【β-グルカン】 注目の免疫向上素材、需要の拡大に期待

 酵母由来β-グルカンは、「β-1,3/1,6グルカン」と呼ばれ、主に免疫機能への作用が期待されている。欧米では酵母由来のβ-グルカンはポピュラーな存在で、1940年代にパン酵母の細胞壁から発見されると、世界的にあらゆる研究が行われてきた。特に1960年代初頭から免疫システムに関する多くの有効性データが発表され、生体防御機能や腸管免疫機能に関連する研究成果が積み上げられてきた。

 2000年には、β-グルカンの特異的な受容体デクチン1が発見され、「自然免疫受容体のデクチン-1の活性化が貪食シナプスの形成によって引き起こされる」という論文が英科学誌ネイチャーに掲載され、“世界で初めてマクロファージの貧食によるメカニズムが解明された”として大きな話題を呼んだ。

 産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門免疫恒常性研究特別チーム長の辻典子氏は、「β-グルカンは、腸管における樹状細胞上のデクチン-1が多糖センサーとして働き、パイエル板T細胞のサイトカイン産生を増強していることが示唆されている」と指摘。さらに、「β-グルカンの摂取が全身性の細胞性免疫を増強し、感染・炎症やがん増殖の予防に寄与する可能性が考えられ、小腸の多糖センサーを介して身体の恒常性がより確実に維持される可能性を示すなど、健康長寿やQOL改善につながる」と説明する。

 また、神戸大学大学院農学研究科生命機能科学専攻教授の水野雅史氏は、「潰瘍性大腸炎やクローン病など、消化管の慢性炎症疾患である炎症性腸疾患(IBD)について、食品中のβ-グルカンによる抗炎症効果がIBD患者に有効である」と指摘するなど、現代が抱える重篤疾患にもβ-グルカンの機能性が一役買いそうだ。

 大麦β-グルカンは、2000年代に入りエビデンスが広く認知され始めた。2006年より大麦やオーツ麦などβ-グルカンを含む食品に“心臓病の危険性を抑える”との限定的疾病リスク低減表示が認められ、また、EFSA(欧州食品安全機関)においても“コレステロール上昇抑制”、“血糖値上昇抑制作用”(大麦β-グルカン)の表示が認められるなど、世界的にβ-グルカンの高い機能性が評価されている。

 国内では機能性表示食品制度で、大麦β-グルカンを関与性分とした18品が受理。「血中コレステロール低下」や「整腸作用」「糖質吸収抑制」が表示可能となっている。腸内フローラへのアプローチという切り口からも大麦β-グルカンへの関心は高く、腸内の善玉菌の働きを助けるプレバイオティクス素
材として注目を集めている。

 岡山大学大学院環境生命科学研究科教授の森田英利氏によると、「β-グルカンや、フルクタン、レジスタントスターチなどの食物繊維が腸内フローラの改善に有効」とし、今後食品への利用範囲はますます広がっていくと期待されている。つづく

 

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