特集【鮫肝油】 実力素材、インバウンド需要が回復の兆し

 水深300〜1,000mの深海で光が届かず、酸素も少ない環境下に生息する深海鮫の肝臓には、スクワレンをはじめ、様々な有用成分が含まれている。ヘミングウェイの代表小説「老人と海」の一文には主人公の漁夫が鮫肝油を毎日飲む様子が描かれている。スクワレンを発見したのは日本人で、今から100年前以上の1906年に東京工業試験所の技師であった辻本満丸氏によって発見、命名された。その後、酸化・変質しやすい性質のスクワレンに水素を添加すると分子構造が安定し、完全な飽和オイル(スクワラン)になることがわかり、化粧品のベースオイルとして利用されるようになった。

 

 鮫肝油は、その多くを海外から調達している。昨年の輸入量は約1,230tで前年から微増となった。アフリカ、中東諸国など、各社による新たな漁場の開拓が実り、ここ数年の輸入量は1,000t超を維持。供給面における不安要素は見当たらない。健食向け原料は、鮫肝油からスクワレンを抽出・精製した高純度の原料や、スクワレン以外のジアシルグリセリルエーテル(DAGE)など特定の有用成分だけを抽出した原料、また、スクワレンのみならず肝油に含まれるその他の有用成分を生かした製造法による生肝油タイプなどが流通する。原料相場はキロ当たり、スクワレンが5,000円から6,000円前後。化粧品向けのスクワランが4,000円から5,000円前後。為替の影響に加え、エネルギーコスト、物流コストが上昇しているものの、原料がタイトな状況でなく、原料価格は比較的安定している。

 

 国内では、沖縄県、青森県、宮城県、静岡県などの海域で捕獲した深海鮫の鮫肝油がある。スクワラン本舗は沖縄近海で捕獲した鮫肝油の原料・OEM供給を展開。国産原料で安定供給できる点が評価され、供給量は前年を上回った。アジアからの引合いが増える中、需要増を見据え、「生産量確保に向けた準備を進めていく」と話す。テルヴィスは昨年、宮城県気仙沼湾などで水揚げされた深海鮫を使用し、DAGE、DPA、DHA、EPAを規格した精製鮫肝油の供給を開始した。宮城大学と共同で機能性研究を推進。新たに骨強化作用を確認しており、抗ロコモ向けにも提案を進めていく。

 

 最終製品は、製造法に伴いスクワレンをはじめとした高純度タイプ、生肝油タイプと大きく分けて2種類の製品群が流通。えがお、エバーライフ、オリヒロブランデュなどをはじめ、10年、20年とロングラン製品のサプリメントが多い。「目立った販促活動を実施していないが、注文量に大きな変わりはない」「大容量タイプの方が売れる」といった声からも高齢者を中心にリピーター顧客が根付いている様子がうかがえる。免疫サポート、肝機能サポートといった訴求点に加え、血流改善や、コレステロール、中性脂肪、脂質代謝改善作用、睡眠の質改善作用などの研究報告もあり、生活習慣病予防に観点を置いた提案もみられる。販売メーカーからは、「インバウンド需要が戻り、販売量が回復基調にある」といった声が多数聞かれた。つづく

 

 

 

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