特集【食品分析検査】 分析項目のラインアップ拡充など、開発進む
小林製薬の紅麹配合製品による健康被害報告の発表や報道を受け、食品分析機関では、焦点となっている「プベルル酸」の分析の問い合わせが増えている。しかし、分析は標準品が入手困難などを理由に、各社とも受け付けを行っていない。また「発酵法を採用している原材料に使用されている菌類の安全確認と思われる分析を受けた」という分析機関もあり、影響は広がりを見せている。現在、「プベルル酸」の原因解明には至ってないものの、消費者庁では、機能性表示食品の安全性や制度の見直しが検討されている。食品の安全性への意識が高まる中、今後、食品分析検査機関による安全性に関する新サービス展開などに期待が掛かる。
昨年1年間での機能性表示食品の届出は1,300件超。分析機関各社でも、機能性成分分析に取り組みを強化する企業も。分
析依頼では、GABA、難消化性デキストリン、大豆イソフラボン、カテキンなどの依頼が多いという声が聞かれた。新規性のある機能性関与成分の研究開発を産学連携で進める分析機関なども出てきており、差別化の動きも活発化している。またCBDのTHCフリーを確認する検査は、請け負える機関が限られているため、依頼が集中。量販店やバラエティショップなどから多数引き合いを受けているという。産学官の取り組みでは、宮崎県が大阪大学、神戸大学、島津製作所と超臨界液体クロマトグラフィ(SFC)』を共同で開発。食の安全分析センターで、同分析機器を活用し、残留農薬検査300・400・500成分を一斉分析で最短で翌日に検査結果の報告を行っている。今後は、機能性一斉分析や呈味性評価などへ受託の幅を広げていく予定だ。
HACCP管理体制の構築が進んだことで、品質管理担当者が専門性を高め、原料、製造工程、製品の各種検査の各段階を自社で検査を実施。定期的に外部の検査機関による検査を組み合わせて行うことで精度を高めている。分析機関では、検査に精通したスタッフを派遣し、管理状況を評価する外部評価や検査技術指導などを行うコンサルティングサービスを展開。第三者評価による管理レベルの把握や検査技術向上に一役を担っている。また、各機関では各種セミナーを開催。HACCP運用講習をはじめ、食品微生物、異物対策、品質管理、食品表示などをテーマに盛況だ。人手不足を背景に、若い社員の育成などに利用されるケースや勤続年数が長い検査員が、自身の検査法の見直しのために参加するケースもある。コロナ禍を機にオンライン開催が増えたことで、遠方でも参加しやすくなり受講者が増えた。一方で、オフラインセミナーは、検査手技など実地でないと伝えにくいセミナーで利用されるケースが多い。
国内の動きと並行して、アフター
コロナ禍で、2023年の農林水産物・
食品の輸出額は上半期、対前年比で
増加した。しかし、中国向け輸出に
関しては、ALPS処理水問題により、中国が輸入規制を行ったため、下半期輸
出額は減少となった。通期では、円安の
追い風もあり、前年比2.9%増の1兆4,547
億円で過去最高を更新。分析検査各社へ
の聞き取りでも、「大幅の伸長はないもの
の、輸出向けの依頼は増加傾向」といっ
た声が多く、「依頼数が減った」という企
業はなかった。
食品輸出は、各国・地域の輸入に関す
る諸規制が異なるため、レギュレーショ
ンに沿い、栄養成分、残留農薬、アレル
ゲン、汚染、有害物質、微生物の検査が
必要だ。各国の規制が複雑なため、相手
先国を絞って対応する企業も多い。
食品分析機関では、中国、香港、米国、
台湾、EU向けに栄養表示成分、残留農薬
分析の必要項目をセットで提案。各国に
グループ拠点がある分析機関では、各地
の検査所と連携し、最新の規制情報を確
認した上、輸出先現地で行うこともある。
日本の国内消費が頭打ちの中、輸出拡大
を見込み、海外への拠点展開やパートナー
企業との提携を検討する分析機関も出て
きている。
また、ヴィーガン、ハラールなど食文
化や宗教向けに、動物由来原材料、豚由
来原材料不使用の証明による付加価値の
提案を進める分析機関も出てきている。