特集【アンチドーピング】 五輪イヤー、AD認証・分析数共に右肩上がり

 今年7月のパリオリンピック・パラリンピックの開催を前に、スポーツニュートリション製品の上市が活発化している。2022年に「ニュートリエンツ」がまとめた報告書によると米国の80%以上のアスリートがサプリメントを摂取していると報告している。摂取理由は、パフォーマンスの向上、疲労回復が最も多い理由で、モチベーションを高めるなどの理由もあった。別の調査では、オーストラリアの競泳選手102人の内、86.9%が何らかのサプリメントを使用していると発表している。

 

 一方、WADAは、「サプリメントは、ドーピング成分混入の恐れがある」と公表しており、基本的にアスリートのサプリメント摂取は推奨していない。さらに、国際オリンピック委員会専門家グル―プによるアスリートのサプリメント使用に関する声明では、「品質保証が十分な製品であっても、故意でないドーピング違反のリスクを完全に排除はできない」と公表。その上で、摂取する場合は、「サプリメント使用についてアスリートが合意し、決定する前に専門の支援が必要である」としている。

 

 日本人は、海外選手と比較してアンチドーピングの意識が高く、オリンピックで陽性反応は、ここ数年報告されていない。WADAが発表した報告書によると、2018年のドーピング違反数は、ロシアが167件と一番多く、次いで イタリア157件、インド152件と続く。それでも、他のスポーツ大会では、日本人のドーピング違反が報告されている。2019年には競泳選手がアルギニン摂取を目的に、2022年にはラグビー選手がクレアチンの摂取を目的に、いずれもサプリメント摂取を要因とするドーピング違反となった。これらは、「うっかりドーピング」と呼ばれ、本人が意図せずにドーピング成分を摂取してしまうことだが、製造工程によるコンタミネーション、商品パッケージ外のものが含有されているなどの理由が挙げられる。

 

 各国の各機関は、WADAが公表するドーピング禁止物質を参考にドーピング防止専門機関を設けている。英国ではUKADが管轄し、LGC社のInformed Choice(以降IC)を推奨、米国ではUSADAが管轄しNSF認証を推奨している。日本も2019年までJADA(日本アンチドーピング機構)が認証業務を行っていたが、2019年に認証業務を終了。現在、日本で認証取得する場合は、海外のLGC社が提供するIC、NSFのNSF SPORTS、BSCG社のBSCGなどがあり、ICおよびBSCGは、日本にも窓口が存在する。英国で長い歴史を持ち、日本で最も利用が進むICは、もともとWADA認定機関として検査を行っていたが、製品検査に特化する形で独立。世界でも最も歴史のあるアンチドーピング認証機関として各国でドーピング検査・認証業務を行う。米国のBSCGは、国際オリンピック委員会医学委員会のメンバーで、薬物検査のエキスパートのドン・H・カトリン氏が立ち上げた第三者機関。禁止成分の分析数は500成分以上と最も多くの禁止物質の分析が可能。加えて、迅速な対応が評価されている。

 

 認証は行っていないが、日本でISO17025基準のドーピング分析を行う機関は、日本分析センターとイルホープ。どちらもJADAが公開する国際基準である違反成分範囲の分析を行い、海外の認証機関と同レベルの検査機械で分析を行っている。2機関共に、認証マークではないが、検査済のマークを製品に付与するサービスを実施。海外との煩雑なやり取りがなく、精度の高い国内完結型分析が評判となり、問合せ数も分析依頼数も増えている。つづく

 

 

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