【学術インタビュー】 高知大学客員教授 田中 徹博士

 発酵法による5-ALAの生産技術の確立は、健康食品のみならず、医学、農業、畜産、水産といった幅広い業界に恩恵をもたらした。大量生産に成功したのは、5-ALAの父とも称される田中徹博士。5-ALAの魅力について、ミトコンドリア活性の視点からうかがった。

 

―― 5-ALA+鉄=ミトコンドリア活性

 私は5-ALAを38年研究してきました。スタートは農業分野です。ミネラルを含んだ5-ALAは光合成を促し、植物の成長を促進させます。サプリメントについては、植物の光合成の電子伝達系が動物のミトコンドリアの電子伝達系に酷似していることに着目し、取り組みを開始しました。ミネラルをたっぷり入れることで植物が光合成するように、サプリメントには鉄を入れることで、ミトコンドリアを活性化させます。

 ミトコンドリア活性のエビデンスは、数々の論文で報告されてきました。5-ALAは鉄と結合することで、ヘムが生成されます。ミトコンドリアの電子伝達系でヘムやシトクロムは生命エネルギー(ATP)を生成します。ヘムはグロビンと結合することで、全身に酸素を運ぶ働きを持つヘモグロビンにもなります。5-ALAは人間や植物のエネルギー生成を司る大元になっているのです。

 

  • ―― 肝臓でトラップされない
  •  5-ALAは、上部消化管でほとんど吸収されます。バイオアベイラビリティはほぼ100%。水溶性も高いので、フリーの5-ALAとして体内を巡ります。脂溶性の化合物は多くの場合肝臓でトラップされますが、5-ALAはトラップされないのも大きな特長です。体内蓄積による有害な影響も及ぼしません。経口摂取した5-ALAは体内の各細胞で、ペプチドトランスポーターなどで能動的に細胞の中に取り込まれます。一方、体内のミトコンドリアで生成される5-ALAも細胞質に一旦出されます。5-ALAは細胞質でポルフィリンに変化し、トランスポーターを介して再びミトコンドリアに戻ってくるのです。
  •  これは進化の過程によるものであり、ポルフィリン化を合成する部分が欠落して核に移動したからだと考えられます。これが非常にラッキーで、自分の体内で生成した5-ALAと経口摂取した5-ALAをポルフィリンに変換した上でミトコンドリアに戻すことを可能にしました。細胞の中にポルフィリンを滞らせることなく、へムとシトロクロムを生み出すことができるのです。 
  •  ミトコンドリアを活性化させると謳った健食素材はいくつかありますが、素材を取り込むトランスポーターを確認できないものもあるように思います。5-ALAはトランスポーターを介して直接ミトコンドリアに届くことが確認されており、確実にミトコンドリアを活性化させます。つづく

 

 

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