【新春特別座談会】 10年目迎える機能性表示食品制度の今後は

 コロナ騒動が収束した2023年。外出増加やインバウンドで経済が活性化する一方、健康食品市場では、さくらフォレストの機能性表示食品2品に措置命令が出され(以下、6.30問題)、業界に激震が走った。また、国立健康・栄養研究所のデータベースが機能性表示食品の届出に使用できなくなり、波紋が広がった。機能性表示食品制度が4月から10年目に突入す2024年、様々な変化にどう対応すればいいのか、有識者から話を聞いた(座談会収録日:2023年12月5日)。

【出席者】

青山 充 氏 ((公財)日本健康・栄養食品協会 常務理事)

池田 秀子 氏 ((一社)日本健康食品規格協会 理事長)

橋本 正史 氏 ((一社)健康食品産業協議会 会長)

万場 徹 氏 ((公社)日本通信販売協会 専務理事)

依田 學 氏 (消費者庁審議官(食品担当))

 

―― 機能性表示食品の届出資料が根拠なしとされた「6.30問題」の経緯を

依田 食品表示法第14条では、同法の運用に当たって景品表示法の適用を排除するものと解してはならないという規定がされています。食品表示法と景品表示法の法目的が違っていて、食品表示法は事前に具体的な基準を定めて、それを順守して頂く。景品表示法は表示行為に着目して、事後的に不当表示ではないかチェックしていくということです。いずれも表示の規制を目的とする制度ですが、それぞれの規定は法目的に基づき独立して運用され得るということになります。機能性表示食品は、事業者の責任で届出をすると、その届出内容が食品表示基準となり、届出者は届出内容に基づき表示する義務が生じることになります。行政庁は、届出内容が守られた形で、当該成分が含有されているかなどを事後的にチェックしますが、届出内容の安全面・有効性の是非について審査する立場にはありません。いわば、自主提案型の公的基準となっています。

 他方、この基準自体が、景品表示法の適用を妨げないということになるわけです。事前規制ではなく、不当表示を個別に規制していく制度です。令和2年度に次長通知として発出した「事後チェック指針」は、あくまでも明らかに不当表示に該当するといった事例を例示したものであって、届出の内容を超えて表示することを許容したものではありません。届出内容は、届出者が科学的知見を挙証できるものに限定されているはずですので、その内容を超えるものを表示しているという時点で挙証できないものを表示している、ある意味自己矛盾というか、事業者の説明責任の範疇を超えた表示をしていることになる訳です。

 

―― 措置命令を受けないためにはどうすればいいでしょうか

橋本 自分たちが届け出た内容の正当性・合理性を十分理解した上で届出をするのが大前提です。広告の仕方についても、届出をしたものが基準になっている訳なので、そこを超えた表現になってないか、広告代理店に言われたものを鵜呑みにするのではなく、果たしてこれが表示違反になるかどうかということを、届出した会社自身がある程度判断できるレベルにしていく必要がある。他社がこういう風にやってるから自分たちもいいんじゃないかとか、そういう安易な考えで広告を考えたりしない方がいいですね。他社がやってることを冷静に考えて判断していくのが、最終的に自分たちのビジネスを守る意味でもすごく重要なことだと思います。

青山 同じSRを使う例も多く、何千という機能性表示食品の届出があって、もう差がなくなっちゃう。何で差を付けて売るんだとなれば、広告とか値段でやる訳ですよ。使っていいSRと使っていい届出文言っていうのをある程度、定型化する必要がある。そんなことやるなら、もう自由度がなくなっちゃうから止めるっていうなら、それは自らSRをやり届出文言を考えればいいと思うのです。国民の健康を考えてない、ただただ商売のことを考えてやってるのであれば、それはこの制度に入って貰わなくても、一生懸命やっている事業者にしてみればそれでいいんじゃないか、そういうのを考える時期なんじゃないか。

 

―― 通販広告の実態はどうですか

万場 それはもうピンキリです。誰がどう見てもアウトというものから、いやこれはどうだろうと我々も判断に迷うものまで、色々です。先日も、腫瘍がなくなる水で薬機法違反がありました。いつの時代の通販か、未だにあるということが信じられないですが、3,200万円ぐらいを売り上げたと。中身は普通の水だったらしいんです。当会の広告実態調査の場合はモニターを使って広告を集めます。会員非会員問わず、注意喚起をする。会員の場合レッドカードということは、まずないのですけれど、イエローであっても会員の場合は面談してすぐ改善して貰う。これはもう地道に繰り返しやっていくしかないというのと、あとはやはり知見がなかなか会社に蓄積しないっていうところが非常にあって、割と俗人的なのです。せっかくできた知見をその次の機会に生かして欲しい。人事異動で人が変わると、その部署に情報が蓄積しないのですよね。そうならないよう体制を整えるのが大事かと思います。

 

―― 2024年4月から制度が10年目に入りますが、改善点はありますか

池田 やはり品質の問題ですね。問題になっていないから問題がないということでは恐らくないでしょう。品質の問題、安全性の問題をもっと見える化して、消費者の信頼を得るようもう一歩前に進めるような、そんな取り組みがあったら良いと思います。

青山 ステップアップすれば製品が評価されるんだ、物も売れるようになるんだ、ここまで言えるんだというルール作りが必要です。あともう1つは、ある程度エビデンスに基づいた定型的な表現であるとか、そういうことをやることによって、届出の簡素化もできるし、事業者もセレクトできるようになるのかなと思います。病者の取り扱いを以前に消費者庁の請負事業でやりました。数項目については、病者はこの位入っていいというようなことで決めたのが、その考え方を他のものにも適用できるのかどうかという広範な議論が必要なのだろうと思います。

万場 一般消費者の方があまりご存知ない。やっぱり官民を上げて、機能性表示食品制度はこういう制度ですと、地道に各社が努力して、もう少し認知度を上げる必要があります。医師が主人公の海外ドラマを見ていましたら、その医師が父親にサプリメントを飲んでるのかと聞くシーンがあったんですけれど、それ位になるとまた日本も変わってくるという感じがします。調子の悪い父親に薬を与えるんじゃなくて、医師がサプリを処方する。イタリアが舞台のそんなドラマがあります。

橋本 今後、海外に向けた展開とかですね、規格基準型の話とか、国が少しバックアップして頂いて、そういうことが実現可能になってくるのかなと。いきなりそこに飛ぶということじゃなくて、まずは足元を固めて行くところがさらなる発展に繋がっていくのかなという。勢いで届出が受理されたから、色んな広告をして、どんどん売上を上げて行くというようなことに繋がらないようにっていう。そこはやっぱり気を付けながら緊張感を持ってやって行くようにすれば、結果的にこの業界が盛り上がると思います。つづく

 

 

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