特集【サケ由来機能性素材】 PG、プラセンタなど海外需要増加

 頭の先から尾に至るまで、様々な栄養成分が豊富に含まれるサケ。捨てる部位がない魚とも評される。健食および化粧品用途では、主に未利用部位を各社独自の抽出精製方法で機能性原料に開発。身からはアスタキサンチン、ビタミンD、アンセリン、皮からはコラーゲン、鼻軟骨からは、プロテオグリカン(PG)、コンドロイチン、Ⅱ型コラーゲン、白子からは核酸、プロタミン、卵巣膜からはプラセンタ様物質などの成分が活用されている。

 

 PGは、サケ鼻軟骨に含まれる成分で、関節サポート素材として定番になりつつある。PGを関与成分とする機能性表示食品は126品(2023年12月現在)。前年比15%増で推移している。「関節軟骨の保護」「膝関節の違和感を軽減」「肌弾力を維持」などのヘルスクレームでロコモやフレイル対策サプリとして利用が進む。ダイドードリンコは、通販ルートで『ロコモプロ』が2023年発売以来累計400万袋を出荷。「今年8月に機能性表示食品としてリニューアル発売後、新たに顧客も獲得でき、年々伸長している」と話す。『ひざ元気』(マルマンH&B)は、ドラッグストアで中高年層から安定した売り上げを維持している。サプライヤーは、日本バリアフリー、一丸ファルコス、リナイス、日本薬品など。さらに富士化学工業が参入するなど新たな動きも見られる。

 

 サケの身から抽出したアンセリンは、イミダゾールジペプチドの一種でカルノシンやレバニンと比べて体内での安定性に優れており疲労回復や滋養強壮素材として人気の原料だ。東海物産は、これまで廃棄されていたサケの切り身を抽出しアンセリンを規格化。ブレインケアや筋肉サポート素材として採用が広がっている。

 

 核酸(DNA)は、サケ白子から採取される機能性素材。ATP産生によるエネルギー増進や育毛など健食・化粧品・医薬部外品まで用途開発される。遺伝子栄養学研究所の松永政司理事長は、「核酸を摂取することでPGC1α(酵素)が活性化し、ATPを作り出す。エネルギーを作り出すには、タンパク質だけではなく、核酸を合わせて摂ることが必要」と話す。最終製品は、MLMや医療機関などで流通する。MLM業界2位のフォーデイズは、23年の3月期の売上316億円の内、主力製品はである核酸ドリンク『ナチュラルDNコラーゲン』を含む健康食品の売り上げは251億円で順調に推移。また、MLMと一般流通共に展開するヒストリーメーカージャパンは、「核酸サプリ『セルクレスト』は会員同士の口コミでコロナ禍でも売り上げが落ちることがなく、大きな伸びはないものの年々右肩上がりに推移している」と話す。

 

 卵巣膜から抽出されるプラセンタ様物質は、ブタやウマ胎盤由来のプラセンタの代替原料として市場に定着。成分は、ブタプラセンタと似たアミノ酸組成を有する。コラーゲンに似た組成も特長で、メラニン産生抑制やコラーゲン産生能向上などが確認されている。各サプライヤーの機能性研究も進展し、疲労回復や免疫改善、更年期症状改善などの治験データを揃える。四つ足動物原料を避ける大手化粧品メーカーにも採用され、基礎化粧品への配合が進む。また、今のところ、マリンプラセンタの基原料は国産の天然サケのみが利用されているのも特長だ。

 

 PGはじめ、核酸やプラセンタ様物質でハラル認証を取得し、海外輸出を伸ばす企業も。卵巣膜から「マリンプラセンタ®」を展開する日本バリアフリーは、世界17ヵ国と取引を持ち、タイ、インドネシア、マレーシアなどの輸出が好調で、売上は前年比増加傾向が続く。協和薬品も、卵巣外皮を独自加工した原料を海外向けに輸出。HOKKAIDOとHALARを合わせた『HDLSOP』のブランドでイスラム圏を中心に輸出を伸ばしている。同じく北海道産サケを利用するリナイスは、マレーシアや韓国で輸出が好調。ハラル認証の取得に加え、北米輸出も視野にGRAS認証取得へと動き出している。つづく

 

 

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