特集【23年下期総括・化粧品受託製造】 下期の増収企業5割、企業間格差も

 本紙編集部では、2023年11月中旬〜12月上旬に掛けて化粧品受託製造企業約250社を対象に、取材およびアンケート調査を実施。過去最高となる141社より回答を得た。2023年下期(7〜12月)の経営状況について聞いた結果、「良かった」と回答した企業は、前年調査より3.6ポイント減の35.7%。業績が前年同期比を上回った増収企業は、前年調査より15.1ポイント減の51.5%となった。一方で2ケタ増収となった企業は同1.6ポイント増の26.6%。受託製造企業間での格差が見られた。

 

 2023年下期に関しては、大型設備を持つ企業が業績を大幅に拡大するケースが見られた。背景には、中高価格帯のシャンプー・トリートメントの人気を受け、ヘアケア製品の受注が好調を維持したことで、大型設備を有する企業に有利に働いた。他には、コロナの収束で外出機会が増え、メイクアップ類やUVケア類の受注回復、店販等の対面販売ルートが復調した一方、コロナ禍で好調だったEC販売の売れ行きが鈍化、ECチャネルで展開する取引先を多く抱える企業は、苦戦を強いられた。「取引先によって、売れ行きに大きな差が見られた」との回答も多く見られた。

 

 受託製造企業にとっては、円安に伴う原料や資材、エネルギーコストの価格高騰が続く中、売上は確保できても利益を圧迫されるといった事態が続いている。また食品や日用品、光熱費の相次ぐ値上げにより、消費者の買い控え等も見られ始めているもようで、一部の企業からは、新製品案件のペンディングや製造の後倒し、既存製品のリピート注文の期間延伸など、影響が出ているとの声も聞かれた。加えて、福島原発の処理水放出に伴う中国輸出の停滞、越境ECの売上減、中国人団体旅行客の訪日再開に伴うインバウンド需要の見込み外れなども業績に影響。実際、処理水放出に伴う中国輸出への影響を聞いたところ、「悪影響が出ている」との回答が4割を超えた。

 

 2024年上期(1〜6月)の経営見通しについては、「良くなる」との回答が、前年調査より3.4ポイント増の45.0%、6割以上が増収を見込んでいる。新工場建設も9社が計画している。円安の進行に伴う原料・資材、エネルギーコストの高騰をはじめ、福島原発の処理水問題など、依然として不安材料は少なくないものの、コロナ収束以降、化粧品業界が回復している様子がうかがえる。「良くなる」と回答した企業からは、「既存顧客の売上回復」や「新規顧客の開拓が好調」「異業種参入が引き続き活発」といったコメントのほか、「取引先と交渉中の価格転嫁が落ち着く」などのコメントが聞かれた。また海外案件も復調しており、3割強の企業は、2024年上期の海外受注が「前年同期比で増加する」と回答。中国輸出は依然不透明ながら、ベトナムやタイなどの受注や、輸出を想定した処方開発依頼、輸出に必要な書類作成依頼は増えているもようだ。つづく

 

 

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