特集【注目の人参素材】 フェムケア、免疫対策で差別化進む

 高麗人参は、「滋養強壮・疲労回復」訴求の代表素材として安定市場を形成、コロナ禍における免疫対策素材としての特需(2020~2022年)は落ち着いたものの、2010年以降の市場規模は概ね200~250億円で推移している。市場にはドリンク、錠剤、エキス、カプセル、茶製品から菓子類、コスメ製品に至るまで、様々な商品が流通している。今年は、「LDLコレステロール対策」領域で高麗人参初の機能性表示食品が登場。続いて、「認知機能の一部である視覚的な記憶力維持」表示でも受理されたことから、今後は機能性表示食品の開発も加速することが予想される。

 

 加えて、高麗人参市場拡大のキーとなるのは「フェムケア市場の開拓」「免疫対策素材としての定着」にある。男性向け商品としてのイメージが強い高麗人参ではあるが、女性層に照準をあてた商品開発は10年以上前から本格化している。古くは大手菓子メーカーが有名女優を採用し、高麗人参を前面に押し出した美容飲料のテレビCMを放映したこともあった。女性をターゲットにした高麗人参商品は、最もポピュラーな機能である血流改善作用を介した美容・冷え対策機能を活用した商品が多い。プラセンタ、セラミド、コラーゲン、エクオールの副材としての採用も。「大手飲料メーカーでは、フェムケア市場の拡大に加えて、呈味性を高めた高麗人参の原料開発が進んでいることから、ペットボトルタイプの美容・温活飲料の開発を検討している」との情報もある。

 アメリカ人参(学名:Panax quinquefolius)は、別名「西洋人参」「花旗参」「広東人参」などとも呼ばれる北アメリカ産の多年植物。生産量の約95%を米国ウィスコンシン州産が占める。本場ウィスコンシン州の全生産者により1986年に設立した米国ウィスコンシン・ジンセン協会では、農家ごとのロット管理をはじめ、米国環境保護庁(EPA)適合の厳しい農薬使用基準をクリアした安全性の高い原料を生産。FDA基準に沿った徹底管理と、農家ごとの残留農薬検査(CODEX基準)実施、市場の栽培種のグレード基準構築などを推進している。

 

 これらをクリアした安全性の高い原料は、味と香りの良さ、有効成分のジンセノシドの含有量が多いことで世界的に高い品質評価を得ている。エビデンスについては、運動による筋損傷抑制、免疫賦活作用、血管拡張作用などが確認されている。フェムケア市場においては、更年期症状や月経前症候群の緩和など、「女性用の滋養強壮素材」としての可能性でも注目されるほか、体の適応力を高める素材(アダプトジェン)としても訴求されている。

 

 田七人参は、標高の高い中国・雲南省や広西省のごく一部の過酷な環境下でしか栽培できず、中国では、「金不換(きんふかん:“金にも換えがたい”の意)」と称されるほど希少価値の高い原料として認知される。中医学においては、「止血」「活血」の相反作用を併せ持つ貴重生薬として用いられる。健康食品では、更年期対策、疲労軽減などで新たなエビデンス構築が進む。機能性表示食品では、血糖値の上昇抑制を訴求した受理品を中心に、複合素材としての採用も見られる。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1773号(2023.10.4)で
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