【有識者インタビュー①】 銀座医院医師・東海大学医学部医学科 客員教授 久保 明氏

◆エイジングの指標とセノリティクスを融合した抗加齢対策に期待

 

 エイジングケアは、医療機関だけでなく、健康産業や化粧品分野でも研究開発が進む。医療現場や健康食品市場では、エイジングケア向けの抗酸化、抗糖化成分の研究開発が活発になっている。「アンチエイジングには臨床指標が必須」と話す久保明医師。長年アンチエイジング治療に取り組む久保氏は、医学的なアプローチはもちろん、サプリメントや運動療法など包括的なエイジングケアを推し進めている。医師としてエイジングケアの現状と今後について話を聞いた。

 

――エイジングケアの最近の傾向は

久保氏:これまで、エイジングケアと言えば血管障害やがんがテーマだったが、近年は認知症とフレイル対策がメインテーマとなっている。認知症の前兆は20年近く続くことが分かっていながら、認知症になるまで薬は使えない。そのようなケースではサプリメントなどが有効と考えられる。今年7月『The American Journal of Clinical Nutrition』誌に「マルチビタミンは高齢者の記憶を改善する」という論文が発表された。もちろん、有効でないという論文もあるが、そのようなデータを医師として有効に使えるケースもある。

 

――エイジングケアで大事な要素は

久保氏:エイジングケアを考える時、身体の酸化・糖化・炎症の3要素を複合的に考え、クルクミンやケルセチン、レスベラトールなどの摂取で予防していく必要がある。高齢者にとって大事なのは、抗炎症だが、糖化が進んでいる人もいれば、酸化が進んでいる人など様々だ。ヒトの身体は矛盾の複合体だから、どのような成分が有効かをエビデンスと共に、患者の身体に合わせて診断している。アメリカの糖尿病学会では、「Patient-Centered-Approach」と呼ばれる患者の価値観を尊重し、治療を行うことが重要視されている。エイジングケアにおいてもエビデンスと共に診断と、どう統合していくのかが大事だと考えている。

 

――エイジングの今後

久保氏:かつて「糖尿病の方が早死にする原因としてエイジングが加速するから」と考えられてきたが、私は、臨床的な指標を捕まえないとサイエンス(医学)になりえないと考え、2006年に抗加齢ドックの前身を立ち上げた。現在では3,000例を超えるデータベースを確立している。研究の過程で『アンチエイジング・未病医学検査』を出版し、エイジングの指標を変えていくためにはどうすればいいかを発表。エイジングの医学を確立することで老化の予防に繋がった。近年は、「セノリティクス」と呼ばれるサプリメントに使われる成分や生活習慣の改善、ワクチン療法による老化細胞除去法が登場した。そこに臨床的な指標を確立したアプローチを組み合わせることで、今後のエイジングケアに非常に期待できる。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1770B号(2023.8.16)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら