「栄養不良の二重負荷」問題に「食事の“ギアチェンジ”」提唱(中村 丁次 氏)

 第10回日本在宅栄養管理学会学術集会が7 月15・16日、都内で開催された。基調講演「栄養不足の二重負荷に立ち向かう在宅訪問管理栄養士」に登壇した(公社)日本栄養士会代表理事会長の中村丁次氏は、「傷病者の場合、適正な栄養量を含有する食事を用意しても、病状や障害により、完全に摂取できるとは限らず、そこのことで栄養状態や病状が増悪化して死期を早めることがある」と語り、食料の提供だけでは健康を維持する人権が保障できない点を強調した。

 

 世界の栄養問題については、低栄養と過栄養・肥満を意味する“栄養不良の二重負荷(The double burden of malnutrition:DBM)”」に言及。「これまで、北半球の過栄養と南半球の低栄養に分類されてきたが、日本の場合、戦前戦後の食料不足による低栄養と、高度経済成長後の食の欧米化による過栄養の問題に取り組んできた」と説明。また、「食の欧米化は、循環器疾患の発症リスク(肥満・高脂質・高血糖・高血圧)を増大させるが、虚血性心疾患の脂肪率を上昇させるリスクにはなっていない」とし、「高齢者における食事療法の継続は、低栄養を助長して、死亡率のリスクを高める」と警鐘を鳴らした。

 

 解決策について、「現在の高齢者は中高年時代にメタボ対策の対象となり、肥満と過食がリスクになることから、腹8分目の必要性と方法を教育されてきたが、この点がフレイル対策にはリスクになる」とし、「ライフステージや健康・栄養状態により食事のギアチェンジが必要。対象者個々の病態・栄養状態に即した栄養指導が不可欠」と語った。また、国内においては、若年層女性の栄養欠乏が老人のフレイル同様に問題視されている現状について、「母体の低栄養は、低栄養児の脳・神経系の未発達、ひいては生活習慣病への進展に繋がる」と指摘した。さらに、「健康定命の延伸には、過栄養を改善する非感染症疾患の予防(メタボ対策)と、低栄養を改善する介護予防(フレイル対策)が重要」とした。つづく

 

 

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