【話題追跡】 ”有機藻類JAS”9事業者に、ハードルは高い?低い?
有機藻類の日本農林規格が昨年1月からスタートした。有機認証を受けた商材はコンブやワカメのほか、直近ではモズクが新たに登場。量販店での販売を皮切りに、健康食品原料としての供給を目指す認証取得事業者もある。オーガニック製品の需要が高い海外への進出をメリットに挙げる企業も目立つ。認定取得事業者への聞き取りでは、「欧州で販売される海藻は有機認証品がほとんど。海藻=有機のイメージが強いほか、ベジタリアン、ヴィーガンは有機嗜好が強い」とする声があった。認証取得事業者数は北海道、新潟、沖縄、大阪の計9事業者。海上生産ならではの高いハードルをクリアした製品が少しずつ出始めている。
有機藻類JAS認証にビジネスチャンスはあるのか――。認証取得事業者に取材した。「欧州への輸出を開始した。代理店契約をした現地企業は2社ほど」「22年は有機原料がほとんどとれず販売実績がなかったが、取引先からは是非紹介して欲しいと依頼を受けている」「沖縄県内イオン、マックスバリュ39店舗で販売していく」など、新たな販路開拓の道筋をつけているようだ。新規ビジネスとしての大きな可能性を秘める一方、認定事業者数が伸び悩んでいるのも事実。制度開始1年4ヵ月後の認定取得数はわずか9事業者にとどまる。海上生産ならではの難しさが背景にあるようだ。「漁船の船底に藻などの付着を防ぐために使われる塗料が認められない」「有機に対する生産者の理解が足りない」「慢性的な人手不足」といった声が聞かれたほか、海外の藻類培養プールで生産を行う事業者からは「排水基準の厳しさ」「コストアップ(時間・費用)」を指摘する声もあった。
認証取得事業者の丸善納屋商店は、「そもそも海藻養殖は海に種苗を出してから、栄養剤を散布することがない。自然の力を借りて養殖するという有機と非有機の違いについて、生産者に理解して貰うことに苦労した」という。髙木屋では、「塗料に含まれる化学薬品が水溶性のため、この塗料を使用する船が通過する海域で養殖した藻類は認証を受けられない。佐渡ではほとんどの船に船底塗料が使われており、船底塗料を塗っていない漁師探しに苦労した」という。このほか、「慢性的な人出不足のため、新たに有機コンブ・ワカメの養殖を増やすことは生産者にとって大きな負担になる」「農作物と違い海藻の生産量は少ないため、認証費用を吸収するのは非常に難しい」などの声が聞かれた。つづく
詳しくは健康産業新聞1762号(2023.4.19)で
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