別冊【九州~健康・美容産業~】 豊富な農林水産資源、健康機能に脚光

 累計受理数が5,000品を超える機能性表食品。九州でも機能性表示食品の開発が活発化している。九州7県の累計受理件数は600品台に到達、機能性表示食品全体の1割以上を占める。受理件数が最も多い県は福岡県の469品。都道府県別でも東京都、大阪府に次いで3位に入る。トップは東洋新薬。独自のエビデンスをもとに訴求別、剤形別にラインアップしており、顧客ニーズに応じたODEM(ODM&OEM)の提案を進めている。大麦若葉由来食物繊維では、「便通を改善する」に加え、「腸内環境改善」「肌の潤い維持して肌の健康を守るのを助ける」旨の機能性表示が可能になった。

 

 健康機能を消費者にダイレクトに伝えられることから、県内通販メーカーの受理も多く、エバーライフ、やずや、さくらフォレスト、ハーブ健康本舗、ZEROPLUSなど、機能性表示食品の拡充を図っている。一方、販売メーカーからは、「明確な機能性表示ができるので、消費者のレスポンスが早い」「ユーザーの認知があり、機能性関与成分を確認して購入する人も少なくない」「製薬メーカーや大手健食・食品メーカーの通販商品も多く、差別化は難しくなっている」「機能性表示食品だけでなく、引き続き、ストーリー性のある商品も取り扱っていく」――など様々な声が聞かれた。コロナ禍では、通販メーカーの売上が比較的堅調に推移している様子がうかがえた。モール型ECサイトも増え、通販全体の競争が激しくなる中、各社、既存商品のテコ入れや、ブランド刷新による新たな顧客層へのアプローチのほか、化粧品拡充、医薬品の販売、リアル店舗の展開など、独自の戦略を打ち出している。

 

 機能性表示食品の増加に伴い、各県では支援体制を強化している。福岡県では、「創薬」と「食品」を中心としたバイオ産業の育成、集積を推進。福岡バイオコミュニティ推進会議(事務局:久留米リサーチ・パーク)が窓口となり、県内事業者を対象に機能性表示食品届けに向けた様々な支援メニューを用意している。全国の自治体の中でも支援メニューが充実しており、利用した県内事業者の累計受理件数は160品を超える。同事務局によると、「届出実績が増え、認知も高まり、事業者側からの問合せが増えている」という。届出支援事業に参画する九州大学農学研究院・清水邦義准教授は、「届出件数の増加と共に、独自性のある素材・機能性関与成分で届出にチャレンジする企業も増えてきた。県内中小企業のレベルも向上している」と、機能性表示食品開発に対する事業者の取り組みの変化を挙げる。

 

 佐賀県では、「さがフード&コスメラボ」が機能性食品・健康食品や、化粧品関連商品の開発を支援。「食品の健康機能について機能性表示食品を含めた相談がある」と話す。長崎県では、長崎県立大学が県の支援の下、ヒトでの効果を検証するための「食品治験ネットワーク」を構築している。産官学連携で「ビワ混合発酵茶」を開発、県外メーカーが機能性表示食品として販売するなど、具体的な成果に繋がっている。

 

 九州地域は、青汁素材や、ビワ、雑穀、カボス、キクイモ、イチゴ(あまおう)、バナナ、ブルーベリー、オクラ、キノコ類、椿油、黒酢、エゴマ油、馬油―― など、多彩な農林水産物に健康機能を加えた特色ある機能性素材が流通。特に青汁素材は種類が豊富で、大麦若葉、ケール、甘薯若葉、イグサ、桑葉、モリンガ、ボタンボウフウなどが栽培されている。健康食品、化粧品受託製造企業では、東洋新薬、森川健康堂、占部大観堂製薬、室町ケミカル、九州薬品工業、誠心製薬、日本薬研、ホウリン、東洋ビューティ、トレミーなどが九州に工場を構える。

 

 豊富な農林水産資源に加え、比較的安定供給できる環境にある中、九州では、“地域産物+健康機能”に着目した取り組みが年々、具現化している。九州地域バイオクラスター推進協議会では、関与成分を九州産であることなどを条件にした「九州おやつ健康プロジェクト」を展開。今年度は、九州産ハトムギを使ったパフやアスタキサンチンを含む藻類を食べた鶏の卵を使ったサブレなど、18品が認定され、累計認定商品は、は50品(22社)になった。また、日仏連携事業として、フランス政府認証の食品産業イノベーションクラスター・VITAGORA(ヴィタゴラ)と連携。現地のニーズを分析した上で、九州食材の輸出サポートなどにも取り組んでいる。鹿児島県では、ボタンボウフウや、オクラなどの機能性に関するエビデンスデータの蓄積が進む。両素材の研究に携わる鹿児島純心女子大学・中野隆之教授は、「ボタンボウフウに続き、オクラを活用した機能性表示食品の届出も肌・血糖分野で進んでいる。オクラの一大生産地である指宿市の産業活性に繋がれば」と期待を寄せる。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1752B号九州別冊号(2022.11.16)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら