特集【カシス】 世界的なカシス不足、市場に打撃

 カシス(黒房スグリ、ブラックカラント)は、ユキノシタ科スグリ属に分類される果実。黒に近い濃紫色をしており、爽やかな酸味が特長でジャム、ゼリー、ジュース、シロップ、パイ、リキュール等の原料として広く利用されている。また、栄養価が高く、ビタミン類、ミネラル、アントシアニン等などが豊富に含まれることから、ヨーロッパを中心に薬用目的で活用されてきた。日本でも、高い抗酸化力を持つ素材として健康食品やサプリメントの素材として長年利用されている。

 

 カシスの主な生産国は、フランス、ポーランド、ニュージーランド(NZ)、カナダなど。全世界のカシス生産量の8割弱をヨーロッパが占めるが、健康食品として利用されるカシスは、ベン・アード、ブラックアダーなど、NZで収穫される品種が多い。NZ産カシスは、南半球特有の強い紫外線を受けて育つため、他地域に比べて栄養価が高く、特にアントシアニンは2倍以上含まれている。国内では森下仁丹、タマ生化学、明治フードマテリア、BGGJapanなどが、果実や種子から抽出したパウダーやエキス末、濃縮エキス、シードオイル等を展開している。

 

 2021年は、気候変動の影響で、全世界的にカシスの収穫量が減少。NZでは、約100年ぶりの大規模な霜害が発生し、例年4,000t前後だった収穫量が約2,000tまで半減した。ヨーロッパやカナダでも、例年の7~8割の収穫に留まったという。そこに記録的な円安、輸送コストの上昇などが重なり、今春は原料の値上げに踏み切るサプライヤーも見られた。「海上輸送費が6倍近に跳ね上がり、値上げに踏み切らず得なかった」「世界的にカシスの値段が高騰している。収穫量が回復するかは不透明」などの声が聞かれている。

 

 主要な国内メーカーへの聞き取りでは、原料高の影響から、出荷数を落とす販売メーカーもあり、カシスの市場規模は最終製品ベースで約63億円(前年比10%減)までシュリンクした。カシスサプリの主な販路は、眼科・クリニック、ネット通販、自然食専門店など。緑内障や加齢黄斑変性症の治療の補助に、『カシスiEX』(森下仁丹)、『ビジョンスマートスプリーム』(日本ジャストザベリーズリサーチ)を用いるドクターの需要は底堅い。また、眼鏡ショップでカシスサプリ販売するケースも増えており、コンタクトレンズ大手のメニコンは、NB品として『めにサプリ』『めにグミ』などを投入している。また、通信販売では、『ピントくるカシス』(野草酵素)、『クロセチン+カシス』(ディーエイチシー)などが安定した売上を維持。「体感性を覚え、リピート購入する顧客が多い」という。MLMではニュースキンジャパンが今春、カシス、ビルベリーを組み合わせた『メタ』を上市した。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1752号(2022.11.16)で
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