連載【エイジングケア】 老化を遅らせるペース・オブ・エイジング
近年、抗加齢医学や老年医学においてペース・オブ・エイジング(POA)という概念がホットトレンドとして話題を集めている。「見た目の若さは身体的な若さに比例する」というコホート研究から派生した言葉で、いかに老化のスピードを遅らせるかがカギになるという。見た目の若さや美しさに直結する肌のPOAの決め手とは。最新の美容トレンドに詳しい、美容アナリストで鍼灸師、KAYOMIサロン代表の奈部川貴子氏に人生100年時代のスローエイジングについて聞いた。
――ペース・オブ・エイジングとは
ペース・オブ・エイジング(POA)の言葉が登場したのは2016年頃。ニュージーランドのコホート研究(ダニーデン調査)が発表され、老化の速度にスポットが当たった。この調査はニュージーランドで1,037人を対象に出生から45歳までを追跡し、生物学的老化の状況について各種生体データで測定したもの。その結果、老化の速度が速い人は遅い人に比べ、認知機能や視覚などの感覚能力が低下傾向にあることが確認された。見た目の若さは身体的な若さに比例することを示唆した研究で、これがPOAの考え方である。
――POAとアクティブ&ヘルシーエイジング
見た目の若々しさを左右する最も大きな構成要素は肌。では肌の状態はどのように判断するか。わかりやすいのはコラーゲン年齢。ハリのあるツヤ肌は、真皮に存在するコラーゲンをはじめ、ヒアルロン酸やプロテオグリカン(PG)の状態に大きく起因する。肌研究が先行する化粧品業界では、この真皮へのアプローチについてあらゆる側面から研究が進む。その軸となるのが肌細胞(細胞テクノロジー)領域。
なかでも重要視されているのがPGの働きだ。PGは肌を支える基底膜などの結合組織に存在する複合糖質。高い保水力を持ち、細胞増殖を促進し、ヒアルロン酸やⅠ型コラーゲンの産生を促進することが認められている。特筆すべきはPGには線維芽細胞に分布する大型PGの「バーシカン」や、結合組織に広く分布する小型PG「デコリン」など複数種類があり、各メーカーがそれぞれの特徴に着目した商品開発を行っていること。PGは細胞活性を介し、コラーゲン年齢をコントロールする有用な素材として認知されている。
こうした考えはインナーケアにおいても同様のことが言える。健康食品やサプリメントの領域では従来「足りないものを補う」という考え方がベースにあるが、細胞を介し「足りないものを作らせる」という方向に今後シフトしていくと予想する。まさに肌のPOA左右するPGは、インナーケアを目的としたサプリメント原料としてもうってつけの素材であり、今後の利用促進に大きな期待を寄せている。つづく
詳しくは健康産業新聞1752号(2022.11.16)で
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