別冊【沖縄県】 伝統食(ヌチグスイ)にエビデンス、沖縄ブランド構築で巻き返し

 沖縄の健康食品産業界は、産官学がスクラムを組み、ブームに依存しない沖縄ブランドづくりを進める。「食はクスイムン(薬になるもの)」「ヌチグスイ(命の薬)」と言われる、長寿を支えてきた伝統的な島野菜や果実、海藻などの農海産物にエビデンスデータが蓄積。沖縄独自の健食認証制度は認定証商品が26品になり、シークヮーサー、クワンソウなど県産素材を活用した機能性表示食品も登場した。アイテム別では、様々な健康機能の解明が進むシークヮーサーが人気に。フコイダン、ウコンは海外の需要が伸びている。新たな動きでは、培養技術が進み、微細藻類が台頭。スタートアップ企業が増え、研究・開発が進む。また、もともと沖縄健康素材は、アップサイクルや環境保全に繋がるものも多く、SDGsの観点からも注目が集まっている。

 

 沖縄県では、健康食品産業の振興を推進。関連団体、研究機関、経営支援機関などが連携し、ブランド力を高める取り組みを実施している。2018年からは「機能的価値」「安心・安全」に加え、「情緒的価値」の3要素を基準とした独自の認証制度「WELLNESS OKINAWA JAPAN(WOJ)」(事務局:沖縄県健康産業協議会)を開始。外部有識者で構成される審査委員会による審査基準をクリアしたサプリメント・加工品に対して認証マークを付与する。累計認定商品は、9月に4商品が加わり、26商品(16社)。サプリメント、飲料、茶、ゼリーなど剤形も広がりをみせている。同協議会専門コーディネーターの照屋隆司氏は、「認定商品が増え、会員企業以外からの問合せも受けるようになった。WOJを通じて、沖縄ウェルネスとしての価値創出と可視化を進めていきたい」と話す。同協議会では、県内イベントに参加するなど、足元から認証商品やマークの認知度向上に繋げる取り組みを継続的に進めていく。

 

 機能性表示食品の開発では、琉球もろみ酢(クエン酸)、青パパイヤ(GABA)、モズク(フコイダン)、ボタンボウフウ(ボタンボウフウ由来クロロゲン酸)など、使用可能なSRを作成済み。中小企業が多い県内事業者が商品開発に利用できるバックアップ体制が整う。また県内では、ヒト介入試験を恒常的に行える機関がなかったが、今年度から「ヒト介入試験プラットフォーム構築事業」がスタートした。さらに、今年6月に沖縄県産業振興公社が、沖縄科学技術大学院大学(OIST)と、県内の科学技術分野の産業化を促進することを目的とした連携協定を締結。OISTは10月、客員教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで大きな話題となった。同公社の末吉康敏理事長は、「OISTと連携を強め、健康・美容産業の活性化、人材育成に繋げていきたい」と話す。

 

 沖縄県では、バイオ関連産業振興計画(健康・医療分野)を策定。バイオ関連産業全体の売上高は153億円(推定)で、健康食品は8割近くの121億円を占める。現状を踏まえ、健康食品ブランド強化に向けて、WOJのプロモーションを実施し、認証商品の売上増を図ることや、県内企業に対し、機能性表示食品やWOJ認証商品の開発に向けた支援を行っていく。また、健康・医療分野を軸とした新たな産業拠点の形成を計画。インキュベーション施設の設備などの建設を予定しており、さらなる企業集積と既存の県内バイオ関連企業の成長の促進を目指す。つづく

 

 

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