特集【CBD】 THC濃度基準の議論進む、市場の本格形成に期待感

 CBDは、麻科の植物に含まれるフィトケミカルの一種。近年、健康食品や化粧品、医薬品などに利用が広がっている。麻にはCBD以外に、THC、CBN、CBGなど数百種類のフィトケミカルが含まれている。これらは、カンナビノイド類と呼ばれ、麻の花穂、葉に多く、茎、根、種子にも微量、存在している。カンナビノイドは身体に摂取されると、ECS(エンドカンナビノイドシステム)と呼ばれる神経伝達機能に作用し、様々な効果を生み出す。マリファナの主成分であるTHCは、ECS内のCB1受容体と強く結合することで、陶酔感や多幸感等の精神作用を引き起こすため、日本を含めて多くの国で使用が制限されている。

 

 一方、CBDはCB1受容体との親和性が弱く、過剰な神経伝達物質の伝達を抑える効果があり、緊張の緩和、睡眠の質向上、抗炎症、認知機能改善などの機能性を発揮する。また、脳血管と脳細胞の間にある血液脳関門を通過し、脳の神経伝達を正常化するという研究成果も報告されている。今年6月には、厚労省所管の医薬基盤・健康・栄養研究所が公開する健康食品素材情報データベースにも収録された。麻は100種類以上の品種が存在する。

 

 マリファナに分類されるCannabis Sativa sspsativa、Cannabis Sativa ssp indica等の品種は、THCの産生量が多い。一方、もともとTHCがほとんど含まれない品種はヘンプと呼ばれている。日本に先行してCBD市場が形成される欧米では、THCの濃度基準を設定している国が多く、これをクリアした品種のみが産業用ヘンプとして栽培できる。米国では2018年に農業法が改正され、THC濃度0.3%未満の麻を産業用ヘンプに指定。昨年1月には濃度基準が1.0%まで引き上げられた。海外では健康食品、医薬品向けにCBDを利用する場合、ヘンプ由来CBDが使用されるケースが多く、マリファナからTHCを除去したCBDが使用されることは少ない。それぞれのCBDの効果に関する臨床データは確認されていないが、CBD濃度はヘンプ由来品が優れている。そのため、海外のCBDメーカーはTHC除去に加えて、麻の品種を証明することが一般的となっている。

 

 現在、国内市場に流通しているCBD製品の剤形はオイル、ベイプ・リキッド、製菓、パウダー、飲料、カプセルなど多種多様だ。食品だけでなく化粧品への利用も多く、クリーム、ジェル、バーム、シャンプー、トリートメント等が上市されている。スポイト容器型のCBDオイルが主流だが、グミやチョコなどの加工食品への配合も増えている。また、『CBDX』(チェリオ)や『BE CHILL』(C-position)など炭酸飲料やアルコールの上市も広がっている。今年2月の「健康博覧会2022」ではライテック、共英、ヘンプフーズジャパン、吉兆堂など15社が出展。青汁、歯磨き粉、女性膣用クリーム、繊維にCBDを練り込んだネックウォーマーなど、ユニークな新商品が多数、出品された。

 

 主な販売チャネルは、オーガニック専門店、量販店、医療機関、スパ、エステサロン、介護施設、Eコマースなど。ヘルシートーキョーやビープルなど専門店、ドン・キホーテ、東急ハンズなどの量販店等では、比較的リーズナブルなCBDオイルや製菓類の取扱量が拡大。医療機関やエステサロンではCBD高配合のソフトカプセル、美容クリーム等の上市が広がっている。Eコマースでは今年5 月、楽天、ヤフーに続き、アマゾンジャパンがCBD製品の出品を許可した。取材では、「クリーム、バームのOEM供給量が1.5倍に拡大した」「ベイプ用リキッドの売上が倍増した」「サウナやスパなどリラグゼーション施設への出荷量が2ケタ伸長した」など前向きな声の一方で、「原料は海外から輸入するしかないため、輸送コスト高の影響は大きい」「一部の原料には値上げも見られ、最終製品の価格の値上げを検討している」などの声もあった。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1744号(2022.7.20)で
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