特集【オーラルヘルスケア】 口腔領域の健康維持に関心高まる

 厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の令和2年調査によると、「う蝕(虫歯)」の総患者数は289万人、「歯肉炎および歯周疾患」は860.4万人、「その他の歯及び歯の支持組織の障害」は189.6万人となっている。また同省が5年ごとに実施している「歯科疾患実態調査」の平成28年分によると、年代別の歯周病有病率は30〜60代にかけて高く、30代以上では3人に2人。歯周病はもはや国民病とも言える状況だ。

 

 さらに近年の研究では、口腔の乱れが全身疾患にも繋がることが明らかとなっている。専門家の話では歯周病菌が血液に入り込み、全身を巡ることで糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞をはじめ、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを増やすことも明らかにされているという。最近では歯周病菌の一部が胃を通過して腸管に入り込み、腸管内の細菌叢を乱すことで、大腸がんの原因になること、がんの転移を促進すること、さらには食道がんや関節リウマチなどの病態とも関連しているとの研究データも出ているという。

 

 オーラルヘルスケアに役立つ商材の市場も盛り上がりを見せている。市場には歯磨き粉や歯ブラシ、デンタルフロス、舌クリーナー、洗口液――など、様々な商材が流通している。なかでもコロナ禍では、口からのウイルスや細菌の侵入の予防やマスク常用に伴う口臭対策への関心が高まり、歯磨き粉や洗口液のニーズが伸長している。厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、2021年の薬用歯みがき剤の国内出荷金額は前年比5.9 % 増の約1,600億8,638万円、口中清涼剤は同1.5%増の171億132万円となった。また本紙が今年5〜6月に化粧品受託企業(有効回答112社)を対象に、今年上期の人気受注アイテムを聞いた調査でも、歯磨き粉と洗口液の回答を合わせると8位にランクイン。オーラルヘルスケア商材のニーズの高まりを反映する結果となった。
 

 食品分野でもトクホや機能性表示食品として、オーラルヘルスケアを表示する商材が数多く流通する。トクホでは、CPP-ACPやキシリトール、パラチノース、マルチトール、リン酸化オリゴ糖カルシウムなどを配合し、「虫歯の原因にならない」「歯の再石灰化を増強する」などの表示が認められた製品は89品。6月には、特定保健用食品の運用改善に向けた次長通知の一部改正案が公表され、「う蝕に係る疾病リスク低減表示」の考え方が提示された。同改正案は7月7日まで意見募集が行われ、8〜9月を目途に通知の改正を目指すという。一方、機能性表示食品でも還元型コエンザイムQ10やエピガロカテキンガレート、ゲッケイジュ葉エキス、ラムノーザス菌L8020株などを関与成分とし、「お口の潤いに役立つ」「口腔内環境を良好に保つ」「健康な歯ぐきを維持する」などの表示で受理された製品が30品を超えている。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1744号(2022.7.20)で
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