連載【はじめての越境EC⑫】 〈EU編〉 「自国では手に入らない価値」提供

 欧州、特にEU加盟国で主なEC市場は、ドイツ(約1,290億米ドル)、フランス(約774億米ドル)、スペイン(約360億米ドル)、イタリア(約335億米ドル)等。EUは1人当たりGDPが高く、越境ECにとって重要な市場となるが、輸送費がアジアと比較して高く、付加価値税が越境ECにも適用される点は留意する必要がある。各国への言語対応のハードルがあるため、日本企業の進出は中国等と比較して進んでいないが、自国で手に入らない日本ブランドの商品を手に入れたいファンは多数存在するため、越境EC進出先として期待される。

 

 EUの主要ECサイトは、ECモールのAmazon、Ebayのほか、Otto(ドイツ、カタログ通販企業発)、Esselunga.it(イタリア、オンラインスーパー発)、Elcorteingles.es(スペイン、百貨店発)といった、各国地場のECサイトも発達している。他の国・地域と同様に新型コロナ禍による外出制限によりECの利用、特に食品購入の利用が拡大した。ネット注文を行った上で、「ドライブスルー受け取り」が普及するフランス、厳しい移動制限で食品のEC販売が特に伸びたイタリア等、各国での状況の違いはあるものの、ECの普及は全体的に拡大している。

 

 EUの越境ECの傾向として、特に自国で手に入らないブランド、メーカー品へのニーズが高いことが挙げられる。日本の化粧品や健康食品は新商品の発売が盛んなため、いち早く最新製品を手に入れたいと考える欧州の日本ブランドファンは多く、越境ECでの進出チャンスとなっている。とはいえ、EUへの輸出は輸送費はじめコストが高くなりがちだ。税制面での注意点として、昨年7月よりEU加盟国への輸出で義務付けられている付加価値税(VAT)が、越境ECにも適用されることになった。以前は22ユーロ(3,000円弱)未満の商品に対して、越境ECは免税措置があったが、EUでは成長するEC市場に対して課税をしていく方針だ。

 

 自社ECサイト作成事業を行う㈱デジタルスタジオによると、「越境ECで税率20%を収めるとなると、かなり高いと感じられると思いますが、利用は減らない傾向」という。送料がもともと高く、1kgの商品で3,000円ほどかかることもあり、購入費用は高くなりがちだ。それでも日本から健康食品、化粧品などを直接取り寄せたい、という消費者ニーズは強いという。EU市場での売れ筋商品は、菓子類、美容・ダイエット等、知名度のある健康食品等。日本の商品力が強いヘアケア製品も人気となっている。つづく

 

 

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