【話題追跡】 ゲノム編集食品解禁、なぜ表示は義務化されないのか!?

 「肉厚真鯛」「血圧を下げるトマト」「収穫量の多いイネ」など―― 高い栄養価や収量の増加、低価格化を実現するゲノム編集食品の開発が相次いでいる。

 「通常のマダイと比べて1.2倍の筋肉量に増える。美味しさは変わらないが食感は少し柔らかくなる」。肉厚真鯛開発者である京都大学大学院助教の木下政人氏はこう説明する。「2014年から開発をスタートした。ミオスタチン遺伝子の1ヵ所を切断する養殖によって、2016年に肉厚真鯛の作製に成功した」という。

 肉厚真鯛は、成長速度が格段に速いことも特徴のようだ。同氏は「表示の義務はないが、ゲノム編集技術を活用したことを明確にしていきたい」としている。

 一方、日本消費者連盟事務局長の纐纈美千世氏は、食卓に流通させることに反対の立場だ。「反対署名は8万8,552筆集まった」とし、2次署名も現在準備中という。ゲノム編集について、「消費者はまだよく知らない。遺伝子組み換え食品を知る人でさえ理解していない」とみる。

 流通を急ぐ政府の方針に問題があることに言及。「政府は“切っただけ”という言い方をするが、自然のやり方ではない」と警鐘を鳴らしている。

 なぜ表示は義務化されなかったのか? 販売ルール策定に関わった明治大学教授の中島春紫氏は、「品種改良は、偶然に起こったDNAの変化で生じた都合の良い性質を獲得し、辛抱強く選出したもの。ゲノム編集は、狙った遺伝子を変化(欠失など)させることで都合の良い性質を獲得し、選抜したもの」と述べ、「ゲノム編集食品は自分の遺伝子をもっているだけ。従来型の品種改良でつくられた食品と区別することは原則的に不可能」としている。

 消費者の懸念のひとつであるオフターゲット(標的外の部位を切断)については、「通常の品種改良でも数多く起きている。ゲノム編集によってオフターゲットの確率が上がる事例も報告されていない」とし、「本当にオフターゲットが心配ならば、通常の品種改良で得られた食品も食べることができない」と指摘した。

 テクノロジーによる食の技術革新「フードテック」をめぐる動きも慌ただしさを増している。この新たな潮流を受けて、改めて“食”の在り方が問われている。つづく

詳しくは健康産業新聞第1678号(2019.10.16)で
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