【有識者インタビュー】 美容医療は“再生美容”の時代へ

 抗加齢医学、再生医療、美容医療を専門とし、近年は「Regenerative Aesthetics(再生美容)」と「Longevity Medicine」を融合した新たな医療の確立に取り組んでいる。プレシジョンメディスンと呼ばれる医学的アプローチとサプリメントなどの食品と組み合わせた治療も実践。エクソソームの新たな論文発表も予定している。Y’sサイエンスクリニック広尾統括院長の日比野佐和子氏に話を聞いた。

 

――近年、患者の加齢による相談で多いのは

日比野氏 健康長寿の延伸を目的とした相談は増えている。具体的には、フレイルやサルコペニア予防、認知機能の低下、更年期に付随する慢性疲労、薄毛、体重管理などだ。女性だけでなく男性の患者さんも増えており、医療は「病気になってから治療する時代」から、「老化そのものに介入する時代」へ少しずつ移行していると感じている。

 

――予防策や改善策は

日比野氏 十分なタンパク質摂取、野菜や魚を中心とした抗炎症性の食事、適切な運動、良質な睡眠、ストレス管理はすべての基本になる。必要に応じてホルモン補充療法や栄養療法なども検討するが、適応を慎重に判断し、安全性を最優先に行っている。現在注目されている「Geroscience(ジェロサイエンス)」では、「老化は多くの慢性疾患に共通する基盤である」という考え方が提唱されている。その介入に、テロメアの制御、NAD代謝改善、ミトコンドリア機能の改善、エピジェネティックスリプログラミングがあり、運動、栄養、睡眠介入など非薬物療法もある。このような薬物療法と生活習慣の管理による組み合わせが必要だと考える。私は美容医療も、単なる外見の変化だけではなく、皮膚や組織が本来持つ再生力を引き出す再生美容(Regenerative Aesthetics)という考え方が、今後ますます重要になると考えている。

 

――プラセンタ、NMN、エクソソームの医師としての知見

日比野氏 ヒト胎盤由来プラセンタは、日本では肝機能障害や更年期障害に対する医療用医薬品として長年使用され、安全性や臨床経験が蓄積されている。一方、ブタやウマ由来プラセンタは食品や化粧品原料として利用されているが、品質管理や安全性、製造工程、科学的エビデンスを十分確認することが重要だ。NMNは体内でNAD+代謝に関与することが知られており、老化研究の分野でも注目されている。近年、セルフリーセラピーへの期待が高まる一方で、エクソソームやセクレトームについては、品質や有効性をどのように評価するかという国際的な標準化が十分ではない。エクソソームはセクレトームを構成する要素の一つであり、その品質は原料細胞、ドナー背景、培養条件、製造方法、保存条件などによって大きく変化する。そのため、今後は製造管理(CMC)、品質規格、力価試験を含めた科学的評価が極めて重要になると考えている。私たちも現在、iPS細胞由来セクレトームの品質評価や作用機序に関する研究を進めており、このほど品質管理や作用機序に関する論文がアクセプトされ、公表される予定。こうしたエビデンスを積み重ねることで、セルフリーセラピーの科学的基盤をより強固なものにしていきたいと考えている。つづく

 

 

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