別冊特別企画【エイジングケア】 老化指標の『HALLMARKS OF AGING』、活用広がる
内閣府は今年6月、「令和8年版高齢者白書」を公表した。高齢者白書では、高齢化の現状と将来像を分析。現在、日本の総人口1億2,322万人に対し、65歳以上の人口は、3,622万人(29.4%)。高齢化率は、ほぼ3割となった。高齢化と共に、課題となっている健康寿命は、年々上昇傾向で、健康な高齢者が増えたことを示唆している。同白書によると、日本の65歳以上の人の約4割が、収入を伴う仕事を続けたいと回答。他の国と比べて高かった。また、これら高齢者の関心事は、「健康」が30.5%で、「趣味や教養」の31.8%に次いで2番目に高く、高齢者のヘルスリテラシーの高さが伺える。超高齢社会の日本で、健康寿命の延伸、健康長寿の実現が国を挙げた課題となる一方、米国では「ロンジェビティ」がヘルスケア産業のトレンドとなっている。ロンジェビティとは、年齢を重ねるに連れて生じる慢性疾患や障害を防ぎ、健康寿命を延伸する活動のこと。寿命を延ばすだけでなく、健康な人生を長く楽しむことを指す言葉として使われる。
米国のXPRIZE財団では、健康長寿を10年以上延伸させることができる研究のコンペティション『XPRIZE Health span』に対して総額1億ドルの賞金を授与すると発表。同コンペには、医薬品、医療機器、機能性食品、運動療法などを研究開発する世界各国から約600社の企業がエントリー。現在、ファイナリスト10社の多くを米国企業が占める中、日本から植物由来エクソソームの開発を行う企業がノミネートされている。今後、臨床試験実施が行われ、2030年までにファイナリストを決定するという。国内でも今年、ロート製薬や森永製菓、湧永製薬など大手製薬・食品メーカーが相次いでロンジェビティ事業に参入を発表。また、通販メーカーのビタブリッドジャパンもロンジェビティ分野へのアイテムを開発していくという。
老化研究を包括する指標として、話題となっているのが『HALLMARKS OF AGING(ホールマークス・オブ・エイジング)』だ。2013年にスペイン・オビエド大学のカルロス・ロペス・オティン教授らの研究チームが老化の要因を9つの図にまとめ、国際的な科学誌『CELL』に発表した。以降、老化研究で最も引用される論文となり、2023年には老化要因を12にアップデートし世界共通の老化研究の決定版となりつつある。 『ホールマークス・オブ・エイジング』では、一時的、拮抗的、統合的3つの分野を12の老化要因を挙げている。これによると、老化は、単一の要因で起こるのではなく、複数の要因が複雑に絡みながら進行していくと示唆している。この12のホールマークスには、「細胞老化」「エピジェネティックの変化」「オートファジーの機能不全」「慢性炎症」「テロメア短縮」「ミトコンドリア機能不全」などの老化要因が提示されており、医学的介入の他に、食事や運動による介入により老化を抑えることができることがわかっている。
健康食品業界では、ホールマークスに提示された要因にターゲットを絞ったサプリメント開発や提案をする企業が増えてきている。『ホールマークス・オブ・エイジング』に独自の視点を取り入れ、分析し製品開発に繋げる動きも見られる。 『ホールマークス・オブ・エイジング』の中では、「老化細胞除去」と「ミトコンドリアの活性化」をターゲットにした製品開発が多い。老化細胞除去成分は、「セノリティクス」とも呼ばれ、医薬品から食品、化粧品までに利用されている。ファンケルによる、バラ科のキンミズヒキに含まれるアグリモール類が体内の老化細胞を減少させるという臨床発表は記憶に新しい。その後、「キンミズヒキ由来アグリモール類」を関与成分とした、機能性表示食品『ウェルエイジ プレミアム』を発売、売れ行きは好調に推移している。グリコ栄養食品も昨年4月、ネムノキで老化細胞除去剤としての特許を取得。今後、さらなる研究を行い、サプリメントなどへの製品化を目指しているようだ。この他、セノリティクスの代表的な素材は、レスベラトロールやケルセチン、NMNな ど。 特に、NMNは、体内でサーチュイン酵素が働くことで老化によって乱れたDNAの修復を行い、様々な作用をもたらすといわれ、製品化、知名度共にエイジングケアの人気サプリメントとなっている。ミトコンドリア活性化は、長くエイジングケアに欠かせない機能として注目されており、各社様々な原料を研究している。代表的な成分であるPQQ、5-ALA、水素などは、ミトコンドリア内でATP(エネルギー)を産出する作用を持つとして人気だ。
抗酸化・抗糖化・抗炎症の3つのケアも老化防止に役立つとされている。活性酸素が細胞に結合すると、酸化により老化が引き起こされるため、抗酸化対策は、古くから一般的なエイジングケアとなっている。SODやグルタチオン、またビタミン類やカロテノイド、ポリフェノール類を配合したサプリメントはエイジングケアの定番だ。糖化は、2010年代から広まった比較的新しいエイジングケアの指標。「糖が体内のタンパク質や脂質に結合し最終糖化産物(AGEs)を生成し、それが細胞に炎症を起こすことで、肌のシミやシワ、動脈硬化などを誘引する」「食後の急激な血糖値上昇が糖化を引き起こし、老化に繋がる」などと各種メディアで紹介され、ここ数年で老化ケアのキーワードに。「抗糖化」を謳うサプリメントは大手はじめ各社から発売されている。炎症は、酸化や糖化で傷つけられた細胞が炎症を起こすとされている。各臓器で慢性炎症が起こると機能障害を招くとして、疾病の発症や進行、さらには老化に繋がる。自覚症状がないことからサイレントキラーとも呼ばれている。炎症(Inflammation)と老化(Aging)」を組み合わせた「インフラメイジング(Inflammaging)」という概念も広がり、疾病予防はもとより、美容の観点からも関心が寄せられている。炎症抑制成分は、オメガ 3系脂肪酸、クルクミンなどに含まれるポリフェノール、ポリアミンなどを配合したサプリメントが流通している。つづく
詳しくは健康産業新聞1842号 別冊特別号『エイジングケア』(2026.8.19)で
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