【話題追跡】 米GLP-1普及が日本のプロテインを直撃
スポーツニュートリション市場を牽引してきたホエイプロテインが、かつてない深刻な岐路に立たされている。近年のフィットネスブームや健康志向の高まりを背景に、国内のプロテイン市場は急速に拡大してきたが、その成長を支えてきた足元のサプライチェーンが激しく揺らいでいる。世界的な需要急増や歴史的な円安の長期化という複数の逆風が重なり、ホエイ原料の輸入平均単価はこの5年間で約3倍にまで高騰。主要ブランドやメーカーからは「企業努力によるコスト吸収はすでに限界を迎えている」との悲鳴が相次ぎ、これまでのビジネスモデルからの抜本的な変革を余儀なくされている。原料高騰の波は、主流である「WPC(濃縮ホエイタンパク)」と、より精製度を高めた「WPI(分離ホエイタンパク)」の双方に深刻な影響を与えている。タンパク質含有率が約80%で乳糖を残すWPCは、安価な一般向け製品の主軸として大量流通してきたため、今回のベース価格引き上げによる価格転嫁のジレンマが最も色濃く出ている。一方、高度なろ過技術で乳糖や脂質を除去し、タンパク質含有率を90%近くまで高めたWPIについては、その高い精製コストに歴史的な円安が追い打ちをかけた形だ。ブランドオーナーからは
「WPIの品質を維持したままでは製品化自体が困難」という、苦渋の声も漏れ伝わる。
さらに状況を深刻にさせているのが、価格高騰のみならず「そもそも原料を確保できない」という調達難の壁だ。この背景には、為替影響だけでなく、グローバルな需給バランスの変動がある。特に米国を中心に爆発的な普及を見せる「GLP-1受容体作動薬」による食習慣および栄養摂取スタイルの転換が、ホエイの需給バランスを大きく変えた。GLP-1製剤の服用者は、食事量が減る中で筋肉量の維持を目的として、ホエイプロテインなどの高タンパク食へシフト。この巨大なマーケットの誕生が、世界規模でのホエイ争奪戦をさらに激化させている。こうした致命的なリスクを分散するため、ブランドオーナーが急ピッチで進めているのが「脱ホエイ100%」へのシフトだ。ソイ(大豆)やピー(エンドウ豆)などの植物性プロテインへの切り替えや、ホエイと植物性原料を配合した「ハイブリッド型」のブレンド商品の開発が進んでいる。植物性原料はホエイに比べて価格が比較的安定しており、コストの抑制に大きく寄与する。さらに今後は、単なるホエイの代替品に留まらない高付加価値化へのアプローチが市場を牽引しそうだ。例えば、植物性タンパクの課題とされる吸収率を独自の酵素配合やEAA(必須アミノ酸)の添加で補うといった機能性の進化は、スペック重視のアスリート層も納得させることができる。また、調達背景にサステナブルや特定アレルギーに配慮した開発ストーリーなど乗せることで、価格競争に巻き込まれないファンを獲得する好機にもなり得る。つづく
詳しくは健康産業新聞1840号(2026.7.15)で
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