特集【注目の伝統食材】 発酵・伝統素材に広がる機能性活用

 日本の発酵食品の要となる米麹について、健康機能に関する研究が進んでいる。免疫調整や腸内環境改善、代謝サポートなどの作用が報告され、機能性素材としての評価が高まりつつある。特筆すべきは、免疫活性化作用に関する新知見だ。日本食品免疫学会で昨年発表された研究では、米麹由来の甘酒、発酵甘味料、米麹加工食品が、ヒト免疫細胞(B細胞・T細胞)の活性化を促す可能性が示された。特に甘酒と発酵甘味料で高い活性が確認され、麹由来成分が腸内細菌を介さず直接免疫細胞に作用する可能性が指摘されている。腸活市場の拡大が続く中で、甘酒、麹グラノーラ、液体塩こうじなど、発酵由来の自然な甘味や酵素活性を活かした商品が増加しているほか、砂糖代替としての麹発酵甘味料も登場し、伝統食材から“腸活素材”としての新たな市場形成が進んでいる。さらに、米麹にはビタミンB1、B2、B6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチンなどが含まれ、発酵過程で増加することが知られている。これらのビタミン類はエネルギー代謝や皮膚・粘膜の維持に関与し、日常的な栄養補給素材としての価値が高い。米麹関連では、麹加工技術を強みとする㈱コーセーフーズの取り組みも注目される。同社は多菌株を活用した麹発酵技術を背景に、甘酒原料や発酵甘味料などの開発を進めている。近年は健康価値を訴求した製品開発や用途提案を強化しており、米麹を基盤とした新たな機能性素材の可能性を広げている。

 

 梅に含まれるクエン酸は、発汗に伴うミネラル消耗への対策として塩分補給と組み合わせやすい点も特徴で、夏バテ対策としての季節性ニーズは根強い。近年は猛暑傾向が続く中、「食欲が落ちる時期に酸味で食べやすさを補う」という、梅関連商品の需要も安定している。クエン酸は、疲労物質に関するイメージや、酸味によるリフレッシュ感、スポーツ飲料の成分としての認知が高く、梅ドリンクやゼリー、キャンディ、塩分補給タブレットなど、夏季限定商品が毎年上市されている。熱中症対策として、電解質の補給は有効とされている。発汗により体内の水分とともにナトリウムなどの電解質が失われると、体温調節機能が低下し、脱水症状を招きやすくなる。このため、厚生労働省やスポーツ医学分野では、水分と電解質を同時に補給できる経口補水液や電解質飲料の摂取を推奨している。五洲薬品㈱は海洋深層水由来の電解質飲料を展開。アイススラリーは体内外から冷却しつつ水分・電解質を補給でき、熱中症対策に有効。無香料・低カロリー飲料も幅広い世代に適し、粉末タイプなどラインアップ拡充も進む。労安法改正を背景に需要も拡大しているほか、業務用市場でも採用が進む。

 

 塩の伝統製造は、現場の経験と長年の工夫に支えられている。㈱天塩の鈴木社長は、塩づくりの本質は机上ではなく現場でこそ理解できると強調する。海水は時間と共に性質が変化し、処理のタイミングや管理精度が品質を左右するため、繊細な対応が求められる。また、カルシウム付着による設備不具合なども多く、設備は使用しながら改良を重ねるのが実情だ。湿潤な日本では自然蒸発に頼る海外型の大量生産が難しく、人手による管理や工夫が不可欠となる。こうした条件の中で育まれてきた製法は、かつての重労働の歴史とも繋がり、現在の技術基盤となっている。しかし、現代ではこうした背景が十分に伝わっているとは言い難い。製造の苦労や自然環境との向き合い方、歴史の蓄積まで含めて発信することが、塩の価値を再認識して貰う上で重要とされている。つづく

 

 

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