【学術インタビュー】 プロポリスの口腔分野における研究
静岡県立大学 食品栄養科学部 食品生命科学科 食品分析化学研究室 教授 熊澤 茂則 先生
プロポリスには抗菌作用や抗炎症作用があることが広く知られており、近年は口腔分野での応用研究が活発化しています。特に、歯周病菌の抑制や歯周ポケットの改善といった効果が報告されており、歯科領域における臨床応用の可能性が検討されています。ここでは、最近の口腔分野における研究例を紹介します。
2025年に発表されたある臨床研究では、歯周病安定期治療(SPT)を受けている32人の患者を対象に、ランダム化二重盲検試験が実施されました。介入として、2.5%のエタノール抽出プロポリスを含有する歯磨き剤を1日2回、4週間使用させ、対照群にはプロポリス抽出物を含まないプラセボ歯磨き剤を用いました。評価項目は、臨床的パラメータ、歯周病原菌数、唾液特性であり、介入前後で比較が行われました。その結果、プロポリス含有歯磨き剤を使用した群では歯周ポケット深さに有意な改善が認められました。歯周病原菌数については、有意差は認められなかったものの、減少傾向が示されました。さらに、唾液の酸性度はプロポリス含有歯磨き剤群で有意に低下し、病原性の低い口腔環境へ移行する可能性が示唆されました。本研究で用いられたプロポリスはブラジル産(バッカリス由来)であり、他産地のプロポリスでも同様の効果が再現されるかどうかは現時点では明らかではありません。これらの結果は、SPTを通じた歯周病の安定化および再発予防の観点から、日常的な口腔ケアにおけるプロポリスの有用性を示唆しています。
また、ポプラ由来プロポリスの成分であるアピゲニンおよびケルセチンが炎症反応に及ぼす影響に関する研究も報告されています。この研究では、ヒト歯肉線維芽細胞にリポ多糖刺激を与えた際の炎症性サイトカイン分泌に対し、これらの成分が抑制効果を示すかどうかが検討されました。その結果、アピゲニンおよびケルセチンはいずれも歯肉線維芽細胞からの炎症性サイトカイン分泌を抑制することが示されました。歯周病に関連する炎症性サイトカインは全身に影響を及ぼす可能性があるため、これらの成分は間接的に脳炎症の予防に寄与し得る可能性も示唆されています。ただし、この知見は細胞レベルで得られたものであり、臨床応用に向けてはさらなる検証が必要です。つづく
詳しくは健康産業新聞1835号(2026.5.6)で
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