特集【インド発機能性原料・製剤化技術】 アーユルヴェーダの伝統とエビデンスの組合せ

 2025年のインドの健康食品市場は、前年比18%増の約90億ドル(約1兆4,000億円)となり、ここ数年飛躍的に伸びている。その要因は、健康食品などサプリメントを購入できる裕福層が増えたこと、コロナ禍で高まった免疫に対する予防意識が現在も続いていること、薬による副作用を気にする若年層が一定以上存在すること、食事の欧米化やストレスの増加、砂糖の過剰摂取による肥満や高血圧など現代病の増加――などが挙げられる。これらの対策として、ニュートラシューティカルと呼ばれるインドの伝統素材にエビデンスを取り入れたサプリメントの利用が広がっている。

 

 今年2月にインド第2の都市・ムンバイで 健康食品原料の展示会「Vitafoods India2026」(主催:インフォーマグループ)が開催された。4回目の開催となる今回、出展社数は約220社で、年々規模を拡大している。出展社の8割以上はインド国内からで、ハーブ原料を中心とした植物抽出物や剤型提案が目立った。インドのサプリメントは、アーユルヴェーダを土台にした原料が多く、シラジット、ホーリーバジル、クルクミン、モリンガ、アムラ、ブラックペッパーなど、一部日本でもなじみのある原料に注目が集まった。また、Molecules Biolabs社やWest Bengal Chemical社などリポソーム化技術を提案する企業も多く、「欧米向けの販売が好調」という声が聞かれた。サプリメントに加え、グミ剤型やプロテインのOEMを行う企業も多く、健康食品の一大生産拠点としての側面も見られる。

 

 インドは、地理的には中東と東南アジアに挟まれ、南アジアとも呼ばれるが、中東やアジア文化とは一線を画す独自の文化を形成している。その独自性は、カレーやアーユルヴェーダに代表されるように、スパイスやハーブを多用する食文化に現れている。インド政府では、アーユルヴェーダ関連製品の国内外における需要の高まりを踏まえ、保健家族福祉省AYUSH庁を通じ、国際的な市場形成に注力。ヒマラヤ地方や海岸地域、砂漠、熱帯雨林の生態系において6,600種類のハーブを確認している。アーユルヴェーダは、5,000年以上の歴史を持つ体系的に確立された伝統医学として膨大な知見を持つ。安心・安全・安価な治療法としてWHOも推奨している。アーユルヴェーダの知名度とニュートラシューティカルの明確さを武器に、インドの機能性素材は、欧米で高い注目度を誇る。今年3月に米国で開催された世界最大規模の健康・自然食品の展示会「ナチュラルプロダクツエキスポウエスト2026」(主催:インフォーマグループ)では、インド原産のシラジット、シャタバリ、ホーリーバジルなどを配合したサプリメントを大手メーカーはじめ、多くの出展社が積極的に提案していた。

 

 シラジットは、ヒマラヤ山脈などの岩の隙間から染み出た成分が数百年かけて分解されたミネラル鉱物。フルボ酸をはじめとした80種類以上のミネラルを含み、アーユルヴェーダでも古くから使われている。今年から米国でも人気が上昇傾向にある。実際、米国のサプリメント市場の視察では、人気のサプリメントショップ「The Vitamin Shoppe」や「Sprouts Farmers Market」で、シラジットを配合したサプリメントが一大トレンドとなっていた。米国では、エネルギー産生や抗酸化、男性機能向上を訴求した製品が多いという。シャタバリは、インドに自生するクサスギカズラ属の植物。インドでは「子宝ハーブ」として、古くから親しまれている。「GOOD EARTH」や「RAINBOW GROCERY」では、女性向けのサプリメントとして、シャタバリを配合したグミやお茶等を販売している。製品数は前年比で増加傾向にある。アメリカのトレンドを受け、日本でも新規のトレンド素材となる可能性がうかがえる。つづく

 

 

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