【緊急提言】 水素ガスの大容量競争に警鐘!
水素吸入器の市場拡大に伴い、「毎分3,000mLの水素ガスを発生」「毎分4,000mL以上の ―― 」「業界最高濃度・流量」などの訴求が散見される。「高濃度=効果が高い」と誤認を与えるやり方は、素人目に見ても怖さを覚える。実際、消費者庁の事故データバンクに水素吸入器の使用による爆発事故等の報告が掲載されている。全ての報告が水素との因果関係が証明されているとは言えないものの、万が一、死人でも出してしまったら、かつて水素水ブームで業界が経験したネガティブキャンペーンによる市場崩壊の比ではないだろう。水素療法を標準医療にと、研究を続けている研究者にとっても多大なる打撃となる。現状、水素吸入器はあくまで健康機器の範疇にあり、絶対安全が原則だ。本稿では、健全な市場成長の足枷になりかねない、エスカレートする根拠なき水素ガスの大容量競争に警鐘を鳴らす。
◆安全かつ必要な水素発生量は600mL/分まで
水素研究で国内をリードする慶應義塾大学の水素治療開発センターからは、血中水素濃度2.0〜2.5%で、様々な疾病に対する有用性を確認した論文が発表されている。3月8日に東京大学で開催された国際水素医科学研究会のセミナーで、かつて慶應義塾大学の水素治療開発センター代表で、これら研究に携わった現・山口大学医学部の佐野元昭教授は、毎分250mLの水素ガスを鼻カニューレで吸入した場合、呼気水素分画(FiH2)は1.389%となり、動脈血水素飽和度は1.3%へと劇的に低下すると述べ、一方で、現在開発中の電磁バルブによる吸気同期パルス供給システムを用いて、吸気時にのみ生成された毎分250mLの水素を供給することで、ロスの削減に加え、供給するタイミングを極めて精密に制御でき、動脈血水素飽和度は5.14%となることを紹介した。
佐野氏は、臨床応用においては、水素ガスの総発生量ではなく、供給タイミングの精密な制御であるとし、人体の呼吸サイクルと解剖学的構造を理解し、「吸気同期パルス供給」を実装することが、血中の水素濃度を最大化し治療効果を高めるための最も合理的かつ革新的なアプローチだと述べた。慶應義塾大学医学部スポーツ医学総合センター/循環器内科専任講師で、現水素ガス治療開発センター代表の勝俣良紀氏も血中水素濃度2.0%を推奨する1人だ。勝俣氏自身は運動の研究もしており、血中水素濃度2.0%で非常にpromising(有望)な結果が出ていると述べ、これまでの研究を通して、「自身の感覚だと、水素ガスは多少薄くても十分に効果があると考えている」とコメントしている。
法政大学の宮川路子教授はも佐野氏の意見に同意。実験データをもとにして示された至適ガス量として、水素濃度99.99%の水素ガスを毎分250mL程度というのが、健康効果を考えた場合にも、安全面でも最適と考えているとした。また、水素ガス量が毎分250mL、600mLの吸入器(水素ガス濃度99.99%)での実験では、連続吸入を行った場合、カニューレを装着している鼻孔周辺(1cm)での水素濃度は0〜3.5%という結果が出ており、この濃度では爆発することはない。安全面では、水素ガスは毎分600mLまでという見解が学会で発表されており、実験結果からもその通りであると考えるとしている。
日本医科大学名誉教授の太田成男氏は、体内の水素の有効濃度は、1%以上必要で、2%程度が望ましいということが動物実験と臨床試験で判明しているとした上で、毎分300〜600mL発生させた水素ガスを鼻カニューレで吸入した場合、空気も一緒に吸入するため、体内では、1.3〜 4%になり、この水素ガス量で少なくとも多くの病気の予防・治療に有効で、かつ健康増進にも寄与できるはずだとする。ただ、水素ガスは軽く、上部に蓄積する可能性があるため、換気には注意する必要があるとした。
県立広島大学名誉教授の三羽信比古氏は、水素吸入器の性能について、水素濃度と共に“水素発生速度(毎分の水素発生量)”との双方を並行解析すべきと指摘。水素発生速度に関しては、「“安静時〜自然呼吸”速度の範囲内」に抑制すべきとの別説も重視すべきだと述べる。「自然呼吸」速度の範囲内とすべき根拠について、一般人の“安静時での自然呼吸”では、毎分5,000〜6,000mLの呼吸(換気)速度だが、水素吸入器でも当該呼吸速度を死守すべきとする。自然呼吸の範囲を超過した吸入水素ガスは、余剰ガスを呼気として排出しようとして、鼻腔だけでは追いつかず、“開口”してしまうという。結果、口内乾燥・気道繊毛機能不全・肺胞内炎症を起こすリスクが高まり、特に水素吸入器を必要とする老齢者・呼吸器疾患者・フレイル者等の身体脆弱者には軽視できないという。また、水素吸入器の安全性は、スペック上の性能数値だけでなく、漏洩検知、自動停止、過圧遮断、逆流防止、流量調整などの保安機能に作動する吸入器内部の各種センサーの充実性も求められるとしている。
つづく
詳しくは健康産業新聞1834号(2026.4.15)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら