【キーマンに聞く②】 機能性表示食品、海外展開で大きな武器に
九州大学 農学農学研究院 環境農学部門 サスティナブル資源科学講座 森林圏環境資源科学研究分野の清水邦義氏は、機能性表示食品を目指す企業を支援する「目利き調査事業」(福岡バイオコミュニティ推進会議)に長年携わる。清水氏に同事業の取り組み状況や、今後、活用が期待される九州地域における機能性素材などについて話を聞いた。
――これまでの「目利き調査事業」を振り返ってどう評価していますか
機能性表示食品制度がスタートしたことによって、中小企業にも製品開発の可能性が高まり、推進力に繋がりました。その中で、目利き調査事業がスタートし、機能性表示食品という聞きなれない制度に対するアプローチをアカデミアからもサポートできたことは、産業界に対して一定の貢献ができたものと考えています。また、事業者自体が機能性表示食品に関する部署を新たに設置したり、人員を配置するのみならず、自ら判断する大きなきっかけになったことを、目利き調査事業を継続する過程で体感しています。試行錯誤の10年でしたが、安心、安全に加えて、ヘルスベネフィットという視点で、これからも目利き調査事業は深化していくことでしょう。
一方、紅麹問題以降、事業者自体が機能性表示食品の届出に慎重になっているように感じますが、私自身はマイナスにとらえていません。むしろ、機能性と安全における両方の科学的エビデンスの重要性が再認識されたと思います。事業者の科学的エビデンスに関する意識の高まり、アカデミアとしても学術論文のみならず、産業界にどのように貢献するかを考えるきっかけになりました。また、「官」として行政がどのようなサポートができるか。こうしたことを常に、各自がより考えるようになったと強く感じます。
――注目する九州産の機能性素材は
九州は、様々な農林水産物があり、極めて高いポテンシャルを秘めています。その中でもキノコに注目しています。福岡県は全国3位のキノコ生産量を誇るほか、宮崎県、大分県、長崎県も生産量は多く、ユニークなキノコ栽培がみられます。福岡県では、エノキタケで、肌水分に関するヘルスクレームを有する機能性表示食品が受理されています。今後、博多スギタケ、博多ブナシメジといった特徴的なキノコのほか、ヤマブシタケや霊芝など、機能性が古来から知られている伝統キノコを活用した機能性表示食品の届出にも期待したいです。キノコ以外では、発酵食品(味噌・醤油・酢・甘酒)、陸上養殖魚(ブリ・マダイ・ヒラメ)、地域特産果実(日向夏・あまおう・デコポン)、野菜(高リコピントマト、キャベツ、大麦若葉、ケール、菊芋、ライチ)などにも可能性が十分にあると考えます。
また、フードロスやアップサイクル、ワンヘルスをキーワードに、SDGs対応といった高付加価値化戦略に基づいた機能性素材の活用も一層見込まれます。機能性表示食品制度以外にも、特色JASマークや地理的表示(GI)マークなどを活用することにより、消費者への訴求力を向上させることができると思います。例えば、特色JASマークは、通常のJAS規格では、カバーしきれない「地域独自の栽培方法や品質特性、機能性成分の含有量」などを明示できます。様々な制度を活用し、機能性食品の付加価値を高め、競争力ある商品開発に繋げて欲しいです。
アジアをはじめとした海外市場でのビジネス展開も加速していくと考えます。11月上旬にシンガポールで開催された「アジア天然物国際会議」では、機能性表示食品に関するトピックも多く発表されました。機能性表示食品は、ASEANにおいて先導的な製品開発の事例として認識されつつあり、一定の評価がされています。アジアでは健康志向・高齢化が進み、日本の高品質な健康食品・医療技術への需要が増加しており、追い風となっています。各自治体(九州経済産業局、福岡県等)でも、地域企業の国際展開を支援する制度の拡充を図っており、様々な事業者のチャレンジに期待したいです。つづく
詳しくは健康産業新聞1824B号【九州別冊号】(2025.11.19)で
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