特集【“冷え”対策~温活サポート~】 Non-Foods商材の躍進目立つ

 冷えの専門家の間では、女性の約8割が抱えるとされる末端の冷え症状よりも、男女問わず国民の6割程度が抱えているとされる深部体温が低い「内臓冷え」が危険と言われれている。内臓冷えは、食生活や喫煙、運動不足など生活習慣の乱れをはじめ、冷たい食事や飲料の過剰摂取、化学繊維の衣類、夏場の冷房の過度な使用、薄着などが原因とされる。専門家の話では、深部体温が1℃下がれば免疫は3割以上、基礎代謝も1割ほど低下するという。近年、全国的に猛暑が定着した我が国では、夏場に冷たい飲料やアイスクリーム、連日のクーラーで体を冷やす行為を行う人も年々増加していると思われる。こうした夏場に過度に体を冷やす行為を繰り返すことが「冷え貯金」を生み、秋口から冬場に掛けて、免疫力を低下させ、風邪を引きやすくなる、自律神経が乱れるなど、様々な弊害をもたらす要因になると、警鐘を鳴らす専門家も少なくない。

 

 一方で、近年は健康・美容のために日常的に身体を温める「温活」というライフスタイルが、健康・美容意識の高い女性層を中心に人気を集めている。身体を温める行為のメリットは、血行促進に伴う冷え症状の改善に始まり、深部体温を上昇させ、免疫力や自然治癒力、基礎代謝の向上、ストレスの緩和や睡眠の質向上、発汗に伴う体内に溜まった老廃物のデトックス作用、さらに肥満やセルライト、むくみ、シミ・シワの予防、髪のパサツキの改善など――など、数え上げればきりがない。温活実践者の増加を受け、ヘルスケア市場では、冷え対策・温活サポート商材の売れ行きが活気を帯びている。市場には、身体の内側からアプローチする機能性表示食品を含む健康食品・サプリメント、温感食品によるFoods分野、身体の外側からアプローチする入浴剤や温熱機器・グッズ類、温感肌着類などのNon-Foods分野に二分される。

 

 Foods 分野では、高麗人参やショウガ、ニンニク、ヒハツなどの身体を温める素材、ビタミンE、L-シトルリン、ポリフェノール類など、血流改善に有効な素材、麹や植物発酵エキスなどの発酵食品が流通する。インテージヘルスケアの「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2024」によると、2024年の血行促進サプリメントの顕在市場は、前年比12.1%増の111億円、冷え対策サプリメントの顕在市場は、前年比14%増の57億円と、共に市場が成長していることを報じている。機能性表示食品では、冷え・体温・血流で検索した結果、「冷えにより低下した血流(末梢血流)を正常に整え、冷えによる末梢(手足)の皮膚表面温度の低下を軽減する」「気温や室内温度が低い時などの健やかな血流(末梢血流)を保ち、手指先の体温(末梢体温)を維持する」−−などの表示が10月7日時点で386品。この半年間で15品以上増加している。

 

 機能性関与成分では、ヒハツ由来ピペリンが146品、モノグルコシルヘスペリジンが84品、イチョウ葉由来フラボノイド配糖体及びイチョウ葉テルペンラクトンが77品、ショウガ由来ポリフェノール(6-ジンゲロール、6-ショウガオール)が36品、納豆由来ナットウキナーゼが22品、カツオ由来エラスチンペプチドが15品などとなっている。他にも、エラグ酸やカカオポリフェノール、カメリアサポニンB、ミカン混合発酵茶葉由来ヘスペリジンなどが複数の受理実績を持つ。他素材と組み合わせて、ダブル・トリプル表示で受理されているものも多い。機能性表示食品の受理企業に販売状況を聞いたところ、販促を強化している企業では「伸びている」「まずまず順調」とのコメントが聞かれた一方、「特に主力アイテムではないので、販促費を投入していないため、横ばいで推移」「売れずに終売した」とのコメントも複数聞かれるなど、販売メーカーによって回答はまちまちだった。

 

 一方、Non-Foods分野では、厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、家庭用医療機器の中で、血流促進や冷え対策に関連する商材の2025年上半期の国内出荷金額は約329億円(前年同期比14%増)。また浴用剤(薬用入浴剤)は約271億円(同3.3%増)。経済産業省の生産動態統計によると、2025年上半期の浴用化粧品(ひげそり用を含む)は約57億円(同12.3%増)と、総じて順調に推移している。リカバリーウェアやコンディショニングウェアとも呼ばれる家庭用医療機器「家庭用遠赤外線血行促進衣」を含む、休養ソリューション(衣)の2023年の市場規模は、(一社)日本リカバリー協会の発表によると、2019年比で1.66倍の1,438億円。今年も医療機器に切り替えを行うメーカー、新たなに市場参入するメーカーも増加。積極的にテレビCMを行うメーカーも見られる。 

 

 これら家庭用医療機器に加え、温熱機器や足温器、水素浴装置や人工炭酸泉製造装置など浴用製品、腹巻や靴下、サポーター類などの温感雑貨類も含めると、冷え対策・温活サポート商材市場は、Non-Foods分野だけでも3,000億円を優に超える市場であると推計される。最近では、家庭用医療機器や温熱機器類など耐久材の多い、Non-Foods商材とサプリメントなど消費材であるFoods 商材とのクロスセルで、売上を伸ばす企業も見られる。これら内外から冷え対策・温活サポートにアプローチする販売手法は、市場全体に相乗効果をもたらす可能性を秘めている。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1822号(2025.10.15)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら