連載⑲【海外ヘルスケア最前線】 米国、 NMNをサプリとして合法に

 9月末に米国食品医薬品局(FDA)が、NMNをサプリメントとして合法と認めました。数年来の業界論争に一区切りがついた格好ですが、その背景には複雑な規制構造があり、今後の市場拡大と同時に新たなリスクもくすぶっています。NMNは2016年頃からハーバード大学のシンクレア博士の“老いは病気であり、改善可能”との啓発もあり、米国市場でブームに火がつきました。しかし2022年11月、FDAは突如、NMNをサプリメント用途に認めないとの判断を下し、米国市場からNMN商品が相次ぎ姿を消す事態となりました。

 

  背景にあるのは、1994年制定の「DSHEA(栄養補助食品健康教育法)」に盛り込まれた“drug preclusion clause”。すなわち、ある成分が新薬(new drug)として臨床研究を許可されている場合、その後にサプリメント成分として扱えないとする条項です。この条項に基づきFDAは、NMNが医薬品としての研究対象となっていることを理由にサプリメント用途を否定しました。しかし業界団体は強く反発。2023年には市民請願を提出し、翌年には訴訟にまで発展しました。

 

 今回、FDAはこれらの請願に正式回答を行い、「NMNは2017年にはすでに米国でサプリメントとして流通していた証拠がある」として立場を改めました。サプリメント使用に合法性があることを認めました。これを受けて、業界団体からは歓迎の声が相次いでおり、「消費者選択の歴史的勝利」と表現しました。一方で、業界団体は、「substantial clinical investigations(十分な臨床試験)」の定義や、IND(治験届受理日)を非公開とするFDAの姿勢に強い懸念を表明。「不透明なルールの下では、次なる成分がまた同じリスクに直面する」と批判されています。つづく

 

 

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