特集【注目の人参素材】 免疫対策ほかフェムケアなど新たな市場開拓へ

■世界的に需要高まる高麗人参

 高麗人参市場は世界的に拡大傾向にある。市場調査会社Global Growth Insightsによると、2025年の世界の高麗人参市場規模は8,401.75百万米ドル(前年比9.2%増、日本円で約1兆2,400億円)に。国内でもコロナ禍で新規ユーザーの開拓が進んだ「免疫対策」について、北米やアジア太平洋地域におけるサプリメント需要の増加が高まっているほか、滋養強壮・疲労回復の代表素材として定番のドリンクと共に、アンチエイジングやフェムケア訴求など新たな用途開拓、化粧品としての採用などが進んでいる。通販やドラッグストア以外に、ミレニアム世代を中心にフィットネスを意識した需要も急増しており、同調査では、2033年までに市場規模は16988.33百万米ドル(2025年比102%増、同約2兆5,000億円)に拡大すると予測している。

 

 国内では、通販企業が定番サプリの1つとしてラインアップするほか、ドラッグストアがPB商品化するなど、健康食品としての「高い認知度」「流通実績」を武器に、底固い市場を形成している。市場規模は、2010年以降、200~250億円で推移してきたが、2020~2022年に免疫対策素材として再評価され、フェムケア訴求など新規提案も進んだことから、エナジードリンクや副材として配合されている製品を除いても、300億円を優に超える規模に成長している。日本で流通する高麗人参原料は、韓国産・中国産が大半を占め、水耕栽培品のベルギー産(イノバックス)の流通も本格化している。サプリメント原料として最も多く流通するのは「紅参」。「発酵」「熟成」「膨化」などの付加価値原料や、有効成分・ジンセノサイドやコンパウンドK(サポニンの代謝物)を高含有化させたハイグレード原料の提案が目立つ。サプライヤーは、サンエフ、OEMメーカーのエフアイコーポレイション、ナガセビューティケァ、フロンティアフーズなどがある。機能性表示食品では、高麗人参由来ジンセノサイドを関与成分とする受理品は10アイテムに満たないものの、認知機能対応、LDLコレステロール対策の領域で製品化されている。

 

■フェムケア訴求で注目高まるアメリカ人参

 アメリカ人参(学名:Panax quinquefolius)は、北アメリカ産の多年植物。生産量の約95%を米国ウィスコンシン州産が占める。主な特徴は、ジンセノシドを豊富に含み、中でも多く含まれるRb1の中枢神経抑制作用はストレス緩和や疲労回復などに有用とされる点。高麗人参(朝鮮人参)と同じウコギ科のトチバニンジン(Panax)属だが、種が異なり、漢方的基本性質として高麗人参は「温」、アメリカ人参は「涼」に区分される。エビデンスとしては、運動による筋損傷抑制、免疫賦活作用、血糖値抑制作用などが確認されている。機能性表示食品では、抗疲労、抗ストレス訴求の受理実績も。近年は、更年期症状や月経前症候群の緩和など、「女性用の滋養強壮素材」としてフェムケア市場での可能性が注目されており、差別化を図る複合素材としての新規採用も拡大している。サプライヤーでは、皇漢薬品研究所やタマ生化学が原料供給に力を入れている。

 

■男性向け更年期中心に用途拡大進む田七人参

 中国では、「金不換(きんふかん:“金にも換えがたい”の意)」と称されるほど希少価値の高い田七人参は、中医学においては、「止血」「活血」の相反作用を併せ持つ貴重生薬として用いられる。健康食品では、更年期対策、疲労軽減などで新たなエビデンス構築が進む。機能性表示食品では、血糖値の上昇抑制を訴求した受理品を中心に、複合素材としての採用も見られる。国内では、主に無添加の田七人参根と、保存用の蜜蝋を塗ったもの、蒸したもの(無添加・蜜蝋付き)などが流通。単味のサプリメントだけでなく、粉末をココアやコーヒー、カレーなど、独特の苦味を活かした新たな用途開拓が進む。原料は、大栄トレーディング、日本粉末薬品、日本薬業などが供給している。

つづく

 

 

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