特集【納豆由来機能性素材】 ナットウキナーゼ、インバウンド需要が再燃
大豆を発酵させて作られる納豆。栄養価が高く、日本の伝統的な発酵食品として海外での知名度も高い。健康食品業界では、納豆に含まれるナットウキナーゼ、納豆菌、ビタミンK2、ポリアミンなどの機能性研究が進み、これらを配合したサプリメントが流通する。代表格のナットウキナーゼは、納豆のネバネバのもととなる納豆菌に含まれる酵素の1つ。機能性研究では、血栓溶解作用をはじめ、血流粘度低下作用、血流改善作用、血圧低下作用、抗ウイルス作用、脳機能改善作用、AGEs形成阻害作用、免疫賦活作用、SARS-CoV2スパイクタンパクの分解作用など、様々な研究成果が報告されている。市場では国産、海外産の原料が流通。ロット数、規格、機能性データなどにより、価格はキロ当り3万円~15万円までバラツキがみられる。また、血栓の主成分となるフィブリン(タンパク質)を分解する値の「FU(フィブリン分解ユニット)」は、ナットウキナーゼの活性を示す単位として浸透。各社、「FU」を規格した原料をラインアップする。
主要原料サプライヤーの日本生物.科学研究所は、海外輸出が拡大。輸出国は米国、中国をはじめ、約40ヵ国におよび、新たにインドへの供給準備を進めている。セルマーク・ジャパンは、台湾産のナットウキナーゼ原料を供給。機能性研究では、脳機能に関するエビデンスデータを蓄積する。新規参入では、兼松ケミカルが韓国産のナットウキナーゼ、ビタミンK2の原料供給を本格化させる。最終製品の動向を見ると、ナットウキナーゼ配合サプリメントは、店販チャネルでは定番アイテムに。ユニマットリケン、野口医学研究所など、各社から新製品投入も目立つ。今年に入り、訪日観光客が増える中、インバウンド需要が増加している。小林製薬は、「ナットウキナーゼ」シリーズの健康食品、機能性表示食品をドラッグストアなどで展開。2025年上期・売上高は、インバウンド中心に回復基調にあるという。機能性表示食品の受理は25品。「血圧が高めの方の血圧を下げる」「手指の末梢体温を維持する」などが謳える。機能性表示食品では、1日当たり3.97g(2,000FU)の摂取量としている製品が主流となっている。各社、国内ユーザーには、機能性表示食品でのアプローチが目立つ。
納豆菌が産生するビタミンK2は、「メナキノン-7」と呼ばれる。魚や鶏肉等に含まれるメナキノン-4に比べ、身体への吸収効率が高いとされる。欧米では、ビタミンC、Dと並ぶ人気成分で、ヴィーガン向けの骨サポート素材としての利用も増えているという。また、日照時間の短い北欧での需要が高い。国内市場では、アクティブシニア向けに、抗ロコモや骨サポート素材として利用が進む。J-オイルミルズでは、納豆由来のビタミンK2を供給。既存原料に加え、アルカリ耐性のパウダー品の取り扱いを開始した。カルシウムやマグネシウムなどと組み合わせやすいことを訴求点に提案を進めている。納豆菌は枯草菌に分類される非病原性の細菌。芽胞を作る菌のため、熱に強く、胃酸で溶解せず生菌のまま腸内に到達する。機能性研究では、腸内環境改善作用、便通改善作用、ビフィズス菌の増加作用、免疫機能増強作用などのデータが蓄積されている。乳酸菌同様、数百種類の菌株が存在しており、プロバイオティクス原料として注目されている。機能性表示食品では、Mizkan、旭松食品が納豆菌K-2株を機能性関与成分に、おなかの調子を整える納豆、ドライ納豆が受理されている。また、納豆菌が脳腸相関によりリラックス効果を得られることから、睡眠領域での機能性表示食品受理も登場している。つづく
詳しくは健康産業新聞1820号(2025.9.17)で
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