ZOOM UP【抗炎症・慢性炎症対策】 健康的な長寿“LONGEVITY”、炎症対策がカギ 

 近年、体内で発生する炎症への関心が高まっている。特に、低いレベルの炎症が継続する慢性炎症が、種々の疾患を引き起こす要因であるとして注目が集まる。慢性炎症は、本来一過性にとどまる炎症反応が弱い状態でくすぶり続け、歯止めが効かない状態になることを指し、痛みなどの自覚症状がないまま進行していく。こうした日々の炎症発症リスクについて、サプリメントや食品を用いた対策が世界的に進んでいる。サプリメント先進国の米国では、関節痛など炎症が原因で起こる疾患向けに抗炎症をテーマにしたサプリメントが広く流通しており、小売店では“JOINT SUPPORT”コーナーと隣接する形で”ANTI INFLAMMATORIES“としてカテゴライズされるなど、消費者にも広く認知されている。またここ数年、健康的な長寿の実現をテーマにした「Longevity(ロンジェビティ)」への関心が高まっているが、慢性炎症は多くの疾患を引き起こすことから、Longevityの観点からも重要なファクターとなっている。

 

 慶應義塾大学と英ニューカッスル大学の研究チームが実施した大規模調査では、炎症と染色体の末端にある塩基配列の長さが、長寿と深い関係にあることを明らかにした。100歳以上の超高齢者(684人)とその直系家族、85~99歳の高齢者、計1,554人を対象に長寿に関係があると考えられる造血能(貧血)、代謝、肝機能、腎機能の働き、炎症と細胞老化の指標とされるテロメア(染色体の末端にある塩基配列)の長さを調べたもの。その結果、炎症の有無や程度を反映する血液中の生化学的指標である炎症マーカーの値が100歳以上の超高齢者の直系子孫(血縁のある子供)では低く抑えられていることがわかり、長寿者の中でも特に炎症マーカー値が低いグループは認知機能と生活の自立をより長い期間保持しているということも明らかになった。
研究チームは「さまざまな副作用がある現在の抗炎症薬に代わる安全な代替薬が開発できれば、高齢者の生活の質を大きく改善し、健康増進に繋がることが期待できる」としている。

 

 また、食品と炎症についてはアカデミアも積極的な研究を進めており、米サウス・カロライナ大学の研究チームが、食事が炎症反応に及ぼす影響を総合的に評価する指標「dietary infl ammatory index(DII)」(食事性炎症指数)を考案。炎症バイオマーカーの数値から食物の炎症度合をスコア化し、DIIスコアと炎症状態との妥当性を検証している。最近では「AntiInflammation Diet(抗炎症ダイエット)」と称し、抗炎症に着目した食事による健康法が発信されるなど、食品中の抗炎症作用に注目が集まっている。つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1819号(2025.9.3)で
健康産業新聞の定期購読申込はこちら