【有識者インタビュー②】 CBDの品質担保に向けた取り組みへ
立命館大学教授 井之上 浩一 氏
2024年12月12日、大麻取締法改正の施行により、大麻製品に関して部位規制から成分規制に変更となった。つまり、成分の含有量で規制されるようになったことで、分かりやすいCBDの品質評価ができるようになった。しかしながら、CBD製品は様々なものがあり、その中から対象の規制物質を分析することは困難と考えられる。そこで今回、日本食品化学学会の理事である井之上浩一氏(立命館大学薬学部教授)に話をうかがった。井之上氏は、食品分析の研究者であり、これまで残留農薬、PFAS、食品添加物などの分析法開発に従事してきた。その技術を利用して、CBDの品質担保に向けた取り組みも行っている。
──CBD製品の成分規制とは?
井上氏 大麻製品で有名なのは、衣類などに用いられる麻や香辛料の麻の実などがあり、こちらは大麻の部位規制として、利用可能なものだった。2024年12月12日に「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」において、曖昧だった部位規制から明確な成分規制に改正された。具体的な規制内容は、「Δ9-THC(テトラヒドロカンナビノール)について残留限度値が設けられ、この値を超える量のΔ9-THCを含有する製品等は「麻薬」に該当する」という内容だ。詳しく説明すると、成分規制の対象は Δ9-THCとTHCA(テトラヒドロカンナビノール酸)の2種類。これらを測定して、トータルの量をΔ9-THC残留限度値として規制する。ただし、THCAの量はΔ9-THC量に換算するため、0.877の係数で掛けている。また、CBD製品の形状によって、基準値濃度が定められている。
──成分規制の分析方法は?
井上氏 分析対象は2種類の化合物だが、基準が厳しい値なので、高感度な分析法が望まれる。厚生労働省の例示では、LC-MS/MSおよびLC-QTOF/MSによる定量法が示されているが、高感度のLC-MS/MSが現実的だと思われる。つまり、LC-MS/MSを用いて、CBD製品からΔ9-THCとTHCAを高感度に分析することが求められるということになる。また定量法は、それぞれの標準品を用いた絶対検量線法もしくは内標準法となる。まれに、海外の成分分析証明書でカンナビノイド類によるHPLCの面積百分率法で定量している例があるが、それは論外といってよい。
──LC-MS/MSによる分析の問題点は?
井上氏 まずは、標準品の入手ということになる。分析対象物質が麻薬なので麻薬研究者免許は必須だ。その上で、海外からの輸入になるため、コスト面と半年以上の時間を要する。次に、CBD製品が多岐に亘るため、試料マトリックスへの影響がある。経験上、グミの分析で過剰にピークを検出(エンハンス効果)する傾向があったり、CBDアイソレートなどは、モニタリングイオンが同じなため、Δ9-THCの分離に影響したり、簡単に測定できる状況ではなく、様々な検討が必要となる。つづく
詳しくは健康産業新聞1818B号 別冊「エイジングケア」(2025.8.20)で
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