特別企画【CBD】 製販卸に検査機関が連携、市場再興に弾み
昨年12月に施行された大麻取締法等の改正施行から一度は鈍化したCBD市場は、再び萌芽が見えてきた。厚労省が定めるΔ9-THCの基準値に合わせ各社の努力により、少しずつ製品の再上市が見られている。安全性が担保されたCBD製品は評判も良く、カンナビノイドの可能性が見えてきた。Δ9-THCの分析可能な国内検査機関も増え、市場活性化の一助になっている。各種団体も立ち上がり、市場発展の礎は整った。CBD製品の正しい取り扱い方、情報の発信、企業と行政の連携により、成長市場への一歩を踏んだ。
CBD(カンナビジオール)は、大麻草から抽出される天然化合物カンナビノイドの一種で、抗炎症、睡眠の質向上、整腸作用など、様々な機能性を有する。ビタミンC・E同等の抗酸化力を有し、エイジングケアの有用成分としても知られる。CBD製品は、2013年頃から流通し市場は拡大していたが、常にΔ9-THC成分量について、グレーゾーンを生み出してきた。こうしたグレーゾーンをなくし明確なルール作りのため、厚生労働省は「大麻のありかた検討会」を組織。約4年間に及ぶ有識者との議論を経て、2024年12月、大麻取締法等の改正を施行した。大麻の所持はもちろん、使用、栽培は麻薬と同等の罰則が設けられることになった。CBD製品においてもこの法律が適用され、Δ9-THC基準値は、油脂・粉末が10ppm以下、水溶液0,1ppm以下、それ以外は1ppm以下と定められた。明確な同基準値は、関連業者や新規参入を計画していた大手食品・化粧品メーカーにとって製品開発の号令となるはずだった。しかし、蓋を開けてみると大半の企業は同基準値に難色を示した。「Δ9-THCの規制値が現実的ではない」「新基準では製品化が難しい」との声が聞かれ、かつて500社以上存在したCBD関連企業は100社程度に激減している。
市場では、CBDの特性上、医療機関での利用が先行しているようだ。医家向けサプリメントなどを販売するスピックは、今年6月にブロードスペクトラムを配合した『Lypo-C CBD』を発売。1,000軒以上のクリニックなどと取引をしており、既に初年度の目標販売数を上回ったという。また、臨床CBDオイル研究会に所属する医師らは、自由診療を中心にブロードスペクトラムを使用している。一般市場では、大正製薬が昨年9月、『CBD Tisho』を発売。1粒にCBD2mgと少量ながら、大手参入は市場にインパクトを与えた。原料分野では昨年、スイス産原料を扱うアストラサナ・ジャパンがGSIクレオスと業務提携を締結。同社が東証プライムに上場企業のGSIクレオスと提携したことで、今後、大手の製品開発に期待が掛かる。
CBDの正しい流通には、輸入時の分析証明書(COA)の確認、輸入後に検査機関へのΔ9-THC分析が必要となる。現在、厚生労働省が公表している国内検査機関は9軒。ユーロフィンQKENは、これまで米国で検査を行ってきた知見を活かし、国内ラボでいち早く検査業務をスタートさせる。国内分析機関は、多くが食品の残留農薬や規制物質phasなど0.01ppm以下の微量の分析を行ってきた実績を持つ。課題となっているのは、標準品の価格と厚労省への報告。現在、Δ9-THCの1検体が100万円近くするという。検査費用は製品にも反映されるため、安価な標準品確保が必要。報告については、基準値以上のΔ9-THCが検出された場合、厚生労働省に企業名を報告する必要があるという。今のところ義務ではないが、万が一、基準値以上の検出がされた場合の対応に各社頭を悩ませる。8月6日には、国内カンナビノイド関連8団体が加盟する日本カンナビノイド関連団体連盟(JCF)が設立された。代表理事の須藤晃通氏は、「正しい情報と責任ある流通体制の土台作りを通じて、消費者と産業の双方を守っていく」と語る。医師でカンナビノイド医療患者会を運営する正高佑志氏は、「10年後もこの市場が持続し、そこで商いを続けていくという気持ちで取り組んで欲しい」と事業者に思いを込める。つづく
詳しくは健康産業新聞1818B号 別冊「エイジングケア」(2025.8.20)で
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