【有識者インタビュー①】 生物学的年齢の若返り、 「健康資産の証券化」に
近畿大学アンチエイジングセンター創設者 日本抗加齢医学会前理事長 ・医師 山田 秀和 氏
アンチエイジングの分野では、エピジェネティクスと呼ばれる実年齢とは別の指標である生物学的年齢を戻す研究が進展している。今年11月8日・9日にザ・プリンスパークタワー東京(東京都港区)で開催される美容医療とアンチエイジング医学の国際医学会「AMWC(Aesthetic and Anti-Aging Medicine World Congress)」では、エピジェネティクスも含め世界最先端のエイジグケア研究に関する発表が行われる。同学会の前理事長で、近畿大学アンチエイジングセンターで医学・薬学、農学・運動に関する研究を行っている医師の山田秀和氏に話を聞いた。
――どうすれば老化を止められるか
山田氏 これだけ治したら老化が止められるという方法はない。老化はDNAのメチル化、酸化、糖化、炎症など15個程度の要因が複雑に絡み合い老化に繋がっている。実のところ、メチル化が有効か脱メチル化が有効かも、はっきりとはわかっていない。一方で、老化をどうコントロールするかは壮大なテーマであり、エピジェネティクスの観点から、運動・栄養・環境・精神4つのケアが老化を遅らせる方法であることがわかっている。さらに、若返りの治療法も開発されつつある。アンチエジング医学では、臓器連環が重要で、例えば、脳と腸と皮膚は相互関係にあり、脳腸皮膚相関を意識することが、シワを抑えたり健康的な体を作ると考えられる。
――老化の指標について
山田氏 アンチエイジング医学は、エピジェネティクス研究の進展により、ようやく理解されるようになった。エピジェネティクス研究は、2013年頃から世界で、日本では2018年に我々が着手し、現在でも進化している。先に述べた4つのケアにより、肉体的年齢、Grim Age、Dunedin PACEなど老化速度を図り、望ましい生物学年齢との差を縮める治療を行う。なぜ、一卵性双生児が片方の人だけ老けて見えるのか?日本在住の外国人が日本人と容姿が似てくるのか?などの要因もわかってきた。DNAの塩基配列は変わらないと考えられていたが、遺伝子の働きが環境や老化などの影響を受けてDNAの配列はそのままでも、科学装飾で遺伝子発現が変化する。つまり食生活や環境により遺伝子に変化が起こるのだ。
――エピジェネティクス研究とその親展
山田氏 2000年頃までは運動や栄養が老化にどれだけ効果的であるのかは、わかっていなかった。2013年のHorvathの生物学年齢をDNAのメチル化パターンに基づいて推定するエピジェネティクスクロックが登場し、死亡率や疾患率までは予測できるようになった。1973年頃から始まったダニーデンコホート研究成果もあり、今では「エピスコア」と呼ばれるAIを活用し、健康状態を予測することも可能となった。その仮説に因果関係を証明できるようになった。視点を変えると、生物学的年齢は、その人の資産を測る基準にもなる。超高齢化社会を迎えて、例え実年齢が定年を超えても、生物学年齢が若かったら働けるという証明になる。我々はこれを「健康資産の証券化」と呼び、世界に提案している。
つづく
詳しくは健康産業新聞1818B号 別冊「エイジングケア」(2025.8.20)で
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