特集【注目の植物油】 新油市場338億円、“サプリ的オイル”浸透
農水省「油糧生産実績調査」によると、2024年の植物油脂の生産量および在庫量の合計は160万t(前年比2.8%増)、うち輸入は152万t(同2.6%増)を占める。植物油市場は、パーム油、大豆油、菜種油を中心としたバイオディーゼル向けなど世界的な食用油需要の増大や、北米、南米、欧州など原料生産国の天候不順に加え、円安による原料調達コストの上昇、ロシアのウクライナ侵攻による穀物需給不安の高まりなどが影響し、世界的な原料価格の高騰が続いている。大手各社では、家庭用、業務用ともに安定供給を前提とした食用油の段階的な価格改定を実施。加工食品の中でも業務用製品の取り扱いの多い植物油は、近年人材不足と効率化が深刻化している物流業界においても荷姿や附帯作業の負荷などから、安定供給に向けた改善が求められている。このため、食用油最大手の日清オイリオグループとJ-オイルミルズ、昭和産業の3社はこのほど、(一社)日本植物油協会と連携し、業務用製品を中心とした物流持続性の向上を目的とした「油脂物流未来推進会議(通称:YBM会議)」を発足。今後の課題解決を目指す。
こうした中、「美味」「健康」「機能」を切り口とした“サプリ的オイル”の需要は着実に高まっている。日清オイリオグループの定点調査(『インテージ社SCI-pデータをもとにした日清オイリオグループ推計』)によると、アマニ油、エゴマ・シソ油、米油、MCTオイルを中心とした「新油」の2024年度の売上高は約338億円(前年比9.0%増)に。内訳をみると、昨年5月にTV報道された影響で、アマニ油が93億円(同44.6%増)と急伸。国内外で好調に推移する米油も193億円(同9.3%増)と伸長した。また、未曽有のオリーブオイルショックにより、世界的な減産に伴う価格高騰のあったオリーブ油は457億円(同3.2%増)と回復基調にある。一方、近年急拡大してきたMCTオイルは、その反動減と共に、アマニ油人気によるカニバリゼーションが影響し29億円(同16.4%減)となり、シソ・エゴマ油も23億円(同17.3%減)と苦戦した。日清オイリオでは、顧客のQOL向上に寄与する機能や価値のある商品開発と拡販に注力。「『日清ヘルシークリア』や米油など該当商品の販売ウェイトを高めることが食用油市場のさらなる活性化に重要」としている。
米油は、原料の米ぬかに含まれるγ-オリザノールの抗酸化作用や血中コレステロール低下作用と共に、オメガ9系脂肪酸(オレイン酸)が豊富で耐熱性が高く、油切れの良いアレルギー・グルテンフリー油として国内外で需要が拡大している。海外市場からは、日本発のボタニカルオイルとして評価が高く、主に揚げ油として幅広く採用されている。サプライヤーは、オリザ油化や昭和産業、築野食品工業など。オリザ油化は、1939年より米油の抽出精製事業を手掛けるパイオニアメーカーとして米油事業を展開。近年は東南アジアをはじめとした海外輸出が好調に伸びている。昭和産業は、「こめ」「ひまわり」「オリーブ」など、独自性の高いブランド展開で差別化に注力。『健康こめ油―国産の米ぬか使用 ―』は輸入原料をブレンドした商品が多い中、国産原料のみを使用している点が好評で、量販店への定番配荷が進む。築野食品工業では、米糠由来の食品・化粧品原料、各種「こめ油」等を展開。米由来の天然成分であるγ-オリザノールを機能性関与成分とする中性脂肪・コレステロール対応の機能性表示食品『体にうれしいこめ油』も販売している。つづく
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