山口大学、民間企業と共同で「高濃度水素水透析システム」を開発

 山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学講座の佐野元昭教授、澁谷正樹講師らの研究グループは、有害な活性酸素を選択的に除去する能力を持つ水素に着目し、透析治療中に水素を効率的に供給するための全く新しい技術を開発。7月16日付で山口大学より発表された。新システムは、水を直接電気分解する従来の方式とは異なり、㈱ドクターズ・マン(横浜市青葉区)との共同研究で独自に開発した「ガス分離中空糸膜」を用いた吸引溶解方式(中空糸膜コンタクター方式)を採用。従来の加圧溶解方式と比べて気泡を形成し辛いなどの特長を持つ。この飽和水素水道水から透析治療の原水となる水素添加RO水を作製するが、透析用水(RO水)の段階で約1,600ppb、患者に使用する透析液の段階でも、十分な抗酸化作用を発揮できる230〜280ppbの安定した高濃度水素の維持に成功した。

 

 ビーグル犬を用いた透析実験で、水素の血中濃度を測定した結果、ダイアライザー(人工腎臓)を出た直後の血液では、水素濃度が透析液の54.0〜67.7%に達する高い値(定常状態で139.7〜192.6ppb)を示した。一方、全身循環に入った後の肺動脈での濃度は3.4〜7.4ppbと著しく低下し、さらに頸動脈に至っては0.1〜0.5ppbと、ごく僅かだった。この結果、ダイアライザーを介して血液中に取り込まれた水素が、体内へ戻った際に肺での呼吸を通じて速やかに排出されることが示唆された。これにより、水素の主たる作用部位は体外の透析回路とダイアライザー内であることが特定され、体内への過剰な水素蓄積のリスクが低い、安全性の高いシステムであることが示唆された。また同システムは、既存の個人用透析用水作製装置に後付けできるコンパクトなユニットとして設計されており、導入コストを抑えながら高機能な水素水透析を実現できることから、多くの医療機関への普及が期待される。同研究成果は、アメリカ人工臓器学会(ASAIO)の公式学会誌『ASAIO Journal』に7月15日付でオンライン掲載された。つづく

 

 

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