夏季別冊号【無店舗販売ルート】 通販市場健闘、MLMルートは新製品投入で回復図る
【通販】 14兆円市場も射程圏内、健食・化粧品のの比率高まる
(公社)日本通信販売協会は6月20日、第42回定時総会を開催し、梶原健司会長は、通販市場が14兆円市場に近づくことに触れ、「社会的ニーズと共に、通販産業は日本のインフラになりつつあり、社会的責任も高まっている。社会インフラとしての重要性と責務が高まっており、次世代を担う人材を育成している」など今後の戦略を述べた。通販協が公表した会員企業を対象とした今年1~5月までの売上調査では、前年比0.94%のプラスとなっている。ちなみに、同協会が発表している直近の2023年通販市場規模は13兆5,600億円となり、前年比6.7%増となり年々増加傾向にある。もはや、通販市場は、コンビニの市場規模に迫る勢いにあり、その中でも、健康食品を扱う企業は51.3%、化粧品は、42.1%と上位を占める。
2025年上半期の健食通販市場は、紅麴問題も一服し、各社回復傾向が見込まれたが、好調だったのは一部の企業にとどまった印象だ。本紙が取材した通販企業からは、「SNSを活用し若者層を中心に好調」などの声がある一方、「コロナ収束以降、売り上げは下がり続けている」「2025年上期はここ数年で一番悪い」などの声が聞かれた。2025年6月には、帝人の子会社で、通販を中心にNMNサプリを販売するリーディング企業のNOMONが事業終了を発表。通販業界にも激震が走った。小林製薬は7月8日、自社通販事業を12月をもって終了すると発表した。同サイトでは、機能性表示食品などの健康食品や化粧品を販売しており、2022年12月期の売上は84億あったが、2024年12月期は45億まで減少した。12月以降は、一部の商品を取引先の通販サイトで販売継続していくとしているが、市場への影響は少なくない。総務省統計局が公表した、2人以上世帯を対象とした2025年5月までのイ ンターネットショッピングの状況によると、2025年1~5月までのサプリメントなど健康食品の購入金額は781円。前年の803円と比較して97%の微減となった。化粧品は、881円と昨年の868円と比較して101%だった。
◆クレジットカードカードの被害額過去最高、通販業界の対策急務
経済産業省は、今年 4 月にクレジットカード不正利用被害額が、2024年に555億円の過去最高額になったと発表した。不正利用の約9割は、ネット通販など非対面による悪用になっているという。消費者庁の藤本武士総括審議官は、日本通信販売協会の会合で、「消費者庁としてもデジタル商取は課題となっており、デジタル社会における消費取引研究会を設立し、クレジットカード悪用に対する厳正なる対応を取る」と話す。こうした中、(一社)日本クレジット協会は、日本通信販売協会と定期的に勉強会を開催。決済システムに3Dセキュアを装備するための提案を行っている。3Dセキュアは、安全にカード決済を行うための、本人認証サービス。導入にあたって「セキュリティー強化によりカゴ落ちが増える」などの声が上がっているが、概ね各社導入に前向きな姿勢をとっている。セキュリティー技術は、現在のEMV3Dセキュアと呼ばれる、より高度なシステムでカゴ落ちのリスクは低減しているという。
【訪販・MLM】 新製品開発や会員獲得が活発に
昨年、好調だったMLM市場は、2025年上期は一服感が出てきた。要因としては、2024年がコロナ禍の反動で好調だったことによる相対的な減少。単純な会員数減少の2点が挙げられる。業界トップの日本アムウェイは、4月30日に2024年12月期の業績を発表した。発表によると、2024年12月期の売上高は、746億円8,000万円となり前期比で7.1%減となった。主力とする健康食品および化粧品が前年比を割り込み、減収は3期連続となった。化粧品などのパーソナルケアは、前年比9.3%減の170億2,300万円となり、栄養補助食品は、3.6%減の427億7,000万円となった。米国に本社を構えるモデーアジャパンは今年4月、突然日本市場の撤退を発表した。同社は一時期、650億円を売り上げるまで成長した企業だけに、業界に不安が残る。
一方、ジャパンローヤルゼリーでは、これまで会員は女性に限られていたが、男性会員も募集を開始。早速、男性会員が増えるなど成果が表れているという。フォーデイズは、2025年3月期決算で売上高が308億7,700万円となり、前期比96.7%となった。昨年末に主力製品である核酸ドリンク『ナチュラル DNコラーゲン』をリニューアル発売したが、健康食品の売上は、239億6,800万円の前年比96.0%となった。各社経営が厳しい中でも、300億円を維持し健闘している。同社は今年、女性アスリート社員を雇用するなど女性アスリートへの協賛を強化している。昨年10月に、ゼンノアジャパンを統合したパートナーコーでは、今年度より積極的にイベントを開催。 6月に開催したイベント「Connect」では、2日間で660人の参加があり、ここ数年で一番の盛況だったという。
MLM企業が多く加盟する全国直販流通協会は、会員向けに法律やコンプライアンス関係のセミナーを積極的に開催している。同協会の高橋局長は、「コロナ禍以降、ネットワークビジネスの多様化が加速した。グループ活動において、従来の売上だけにとらわれない思いを持つグループが躍進している。アトラクトマーケティングと呼ばれる、売り込み型の営業ではない手法で業績を上げている」と話す。
つづく
詳しくは健康産業新聞1816B号「夏季別冊号」(2025.7.16)で
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