夏季別冊号【食系店舗ルート】 紅麹問題受け、食の安心・安全に拍車

◆止まらない値上げラッシュ、「売上高増」「販売数減」

 物価高による消費マインド低迷が顕著になってきた。市場動向について、食系卸や自然食品専門店によると、販売数量や購入頻度減少を懸念する声が寄せられている。原材料高騰に伴う価格改定の動きも勢いを増している。帝国データバンクが6月30日に発表した食品値上げ動向によると、「2025年の値上げ累計品目数は1万8,697品目となり、早ければ7月にも年間2万品目に到達する見通し。飲食料品の値上げの勢いは、前年に比べて強い状態が続いている」という。原料調達にも課題が残っている。取材先からは、「海藻やカカオ、鶏卵などの原料調達が不安定になった。商品に価格転嫁せざるを得ない状況が続いている」としている。

 

 販路別の動向では、自然食品専門店に明暗が。多店舗展開するショプは順調に売り上げを伸ばす一方、個人経営店は横這い傾向に。生協宅配はコロナの反動減を受けた格好となった。雑貨店やアパレル業態などの新規チャネルで減少分を穴埋めするアプローチもみられる。今年上半期の売れ筋は、「調味料全般」「梅干し」「梅醤番茶」「梅肉エキス」「輸入菓子」「青汁」「玄米酵素」「酵素ドリンク」「乳酸菌生成エキス」など。紅麹サプリ問題後、ルテインやイチョウ葉といった商品は減少傾向にある。専門店では、フェアトレードや福祉、環境、オーガニックなどをテーマとする商品展開が進んでいる。消費者の安心・安全を求める需要に対応するほか、購入することで「環境に配慮したい」「生産者を応援したい」という利他的ニーズに対応。㈱こだわりや上野店によると、「この潮流は昨今、若い世代にも波及しはじめた」としている。

 

◆オーガニック市場、「転換期間中農作物」に注目

 オーガニック市場は、“転換期間中農作物”がトレンドのひとつとなっている。アグリシステム代表取締役社長の伊藤英拓氏は、「有機に転換する雑穀農家が増えている。4年前の有機農家は26件だったものの、僅か3年で52件に増えた」と指摘。その背景には農家の危機感があるという。「化学肥料や農薬の約98%が海外に依存している。価格が高騰する昨今、安定的な仕入れの見通しもつかない。経営的リスクを感じる農家が多く、国内で循環できる有機栽培に可能性を感じる農家が増えてきた」という。有機農業に転嫁して1〜2年目の“転換期間中有機農産物”について、「転換期間中農産物を購入する人たちが増えない限り、農家が安心して有機に転換することができない。転換期間中有機農産物を応援することは日本のオーガニックが広がっていくポイントだ」という。

 

◆注目トレンド、「プラントベース」「プロテイン」

 「国内のプラントベース市場はヴィーガン層への訴求よりも、一般層に向けた商品開発が活発になっている」。こう語るのは、国分グループ本社㈱商品開発部長 兼戦略推進室部長の織田啓介氏だ。植物性と動物性のハイブリットやサステナブルな商品化が進んでいるという。代替という概念ではなく、SDGsに繋がるメッセージを打ち出していくことも重要としている。タンパク質の需要や価値観は国内でも定着した。同社によると、「ミルクリッチタイプが伸長傾向にある」という。このほか、ビタミンEや食物繊維(イヌリン)含有ヨーグルトは、腸活や美容を意識する人に支持されているという。

 

 プラントベースフードの魅力は「健康に良い」「食物繊維を多く摂取できる」「脂質の吸収を抑えられる」―― 。調査会社のマイボイスコムが2025年5月1日〜7日に調査した結果によると、プラントベースフードの魅力は「健康に良い」が34.9%で最多に。次いで、「食物繊維を多く摂取できる」が16.7%、「脂質の吸収を抑えられる」が13.9%と続いた。女性の若年層は「美容に良い」「ダイエットに効果的」との回答が目立ち、女性の高年代層では、「良質な植物性タンパク質を摂取できる」「高タンパク・低カロリー」との傾向がある。直近1年間にプラントベースフードを飲食した人は4割弱。飲食したものは「植物性ミルク」が約16%、「大豆ミートなどの代替肉を調理したもの」が1割強だった。

つづく

 

 

詳しくは健康産業新聞1816B号「夏季別冊号」(2025.7.16)で
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