夏季別冊号【2025年上期総括と下期展望】 健康産業、再成長に向け正念場

 2024年の健康食品市場は、前年比4.7%減の1兆2,529億円に落ち込んだ。この20年ほど、健康食品市場は東日本大震災や新型コロナといった難局を乗り越え、微減と微増を繰り返しつつも、23年に初の1.3兆円に到達。しかし24年3月の紅麹問題によって大打撃を受けた。紅麹問題直後の過激な健康食品バッシングは今も記憶に新しい。こうした逆風に加えて、物価高に伴い消費者の節約志向が加速。総務省統計局の家計調査では、24年のサプリメント支出は前年割れとなった。こうした中、紅麹問題によるマイナスの影響は月日とともに薄れ、25年に入ってからは「影響なし」との声も聞かれる。かつての右肩上がりの成長は再び期待できるのか。消費者の健康志向に応えてきた健康産業は、今まさに正念場を迎えている。

 

 総務省統計局がまとめた家計調査によると、 2人以上世帯を対象とした「健康保持用摂取品」(サプリメント形状の健康食品)支出の24年累計は1万2,356円で、前年比9.0%減と落ち込んだ。大幅な減少ではあるが、世帯類型別では違った側面が見えてくる。家計調査の世帯区分別構成比は、「勤労者世帯」が55.0%、「無職世帯」が34.4%、「個人経営などの世帯」が10.6%。サプリ支出を支えているのは以前から、年金世代などの「無職世帯」だ。紅麹問題の逆風下で、「無職世帯」の健食支出は1万7,552円で前年比1.6%増と伸長。一方、「勤労者世帯」の健食支出はその半分ほどの8,833円で同14.1%減となった。24年の1世帯当たり1ヵ月間の実収入は、「勤労者世帯」が63万6,155円であるのに対し、「無職世帯」は26万1,073円。収入が少ない「無職世帯」の方が、サプリ支出が多いという実態がある。従来から健食市場は高齢者に支えられてきたが、今後もこの世代へのアプローチが重要になる。

 

 紅麹問題の影響が薄れた今こそが、反転攻勢に向けた好機である。トレンド番付で触れたように、新たなビジネスチャンスは各所で萌芽している。そして再成長に向けたカギとなるのは、健康食品の日常使いの浸透だ。健康食品に興味はあるが摂取したことがないといった層は一定数存在する。こうした潜在層に対し、利用方法やメリットを普及啓発し、市場の裾野の拡大を図る。決してバズらなくても、地道な取り組みによって利用者を増やすことが、長期的視点からも重要である。つづく

 

 

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