特集【医家向けサプリメント】 抗加齢対策にサプリメント活用増える

 今年6月25~27日、大阪・関西万博に関連したイベントとしてインテックス大阪で開催された『Japan Health』(インフォーマ マーケッツ ジャパン主催)内で、「自由診療が切り拓く日本医療の新市場」と題し、現役医師や歯科医師らがディスカッションを行った。医師らは、「日本の保険診療は素晴らしい制度だが、限界にきている。早急に自由診療を推進し海外に向けて日本の医療を発信していくべき」など異口同音に語った。厚生労働省が発表した統計によると、令和5年の19床以下の医療機関は、全国で10万4,894軒あり、その内自由診療のみを行うクリニックは1万428軒だった。同調査は、3年に1回行われており、前回調査(令和2年)の9,263軒より1割程度増加している。前々回の調査でも同等の伸び率を示しており、自由診療クリニックが年々増加している傾向がうかがえる。同省が発表した令和5年の国民概算医療費は、前年比2.9%増の47.3兆円となり、過去最高額を記録し、保険診療の逼迫が危惧されている。

 

 超高齢化社会が課題となって久しいが、政府はこの危機をチャンスに変えるべく投資を行い、医療機関と共に様々な政策を行っている。医療機関では、患者の未病対策を推進すべく、診療だけでなく、運動・食事習慣の指導などを強化している。かつては少数派だった食事や栄養、サプリメント療法が、様々なクリニックで利用されるようになってきた。実際、保険診療でカバーできない治療補助やエイジングケアを行うクリニックを中心にサプリメントを扱う施設数が増えている。健康機器を扱うドリームファクトリーとメディカル・データ・ビジョンは4月18日、みぞぐちクリニックの溝口徹医師を招き、「自律神経の乱れ、更年期障害と食」と題して講演を開催した。溝口医師は20年前、家族の原因不明の病が、栄養療法で回復に向かったことをきっかけに、保険診療から自由診療に変え、サプリメントや栄養療法を中心に、他の医療機関で治癒できなかった患者の治療例を紹介した。

 

 「医家向けサプリメント」は、一般市場で扱われているような製品は少なく、単一素材の高含有や、相乗効果を得られる処方で複数素材を組み合わせたものに加え、ヒト試験のエビデンスがあるか、どこで製造しているかなどの安全性が一つの基準となっている。代表的な素材では、ビタミン各種などの基礎栄養素から冬虫夏草、担子菌培養抽出物などのキノコ系はじめ、活性高分子多糖体、有機ゲルマニウム、フコイダンなどを用いたサプリメントが利用されている。これまで、免疫賦活系の製品が、がん治療の補助として使われてきたが、近年は、エイジングケア、認知機能、睡眠障害、更年期障害、妊活サポート、白内障、子供の発達障害――など、国民の課題となっている症例に対するサプリメントの利用も広がっている。睡眠障害にはGABA、子供の発達障害にはPS(ホスファチジルセリン)、女性の更年期障害には、大豆由来エクオールなど、利用される素材の幅にも広がりがみられる。眼科領域では、加齢黄斑変性の予防としてルテインの利用が増えている。

 

 抗加齢医学会の分野では、「老化は病気」としての研究が進んでいる。美容クリニックや再生医療クリニックでは、老化を食い止めるセノリティクス素材として、ケルセチン、レスベラトロール、NMNを配合したサプリメントが利用されている。特にNMNは、医療機関の取り扱いが多く、激戦市場となっている。三菱商事ライフサイエンスは、数年前から医療機関に対し、NMNサプリ『ファイナ』の営業活動を積極的に開始。学会にも出展するなどして扱い機関を着実に伸ばし今年5月には、医療機関専売『ファイナプレミアム』を発売した。今年は、大麻由来のCBDを医療機関専用サプリメントとして使用する動きも見られる。スピックは6月、業界に先駆けてCBDサプリメントを発売。臨床CBDオイル研究会はじめ自由診療を行うクリニック中心に扱いが広がっている。つづく

 

 

 

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