特集【注目のオーラルヘルス素材・商材】 医家向けルートは好調、 一般市場もジワリ…

 う蝕(虫歯)と歯周病の口腔2大疾患が、糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞をはじめ、脳梗塞、誤嚥性肺炎、アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβを増やすことなどが明らかにされている。虫歯菌や歯周病菌が口腔内で炎症を起こし、その炎症性物質が歯周ポケットから血液内に入り込み、全身を回ることが要因とされる。深刻なことに、わが国の成人の約8割が歯周病およびその予備群と言われている。厚生労働省の発表した令和5年の患者調査では、3年前の調査より300万人弱増加の1,100万人以上が、歯周病菌治療を行っていることが示された。

 

 さらに、総人口における65歳以上人口が29.3%と過去最高を記録する超高齢社会のわが国では、高齢者のオーラルフレイル(口腔機能低下症)を予防・抑制することも、喫緊の課題とされている。歯を失うことで食事からの十分な栄養素を取り込むことができない、また滑舌が悪くなり、人との会話などコミュニケーションを避けるなど、フレイルの要素になり得る。さらに、加齢と共に唾液を分泌する能力が低下することで、ドライマウスが進行する。ウイルスや菌は口から侵入してくるが、唾液中のIgA抗体の働きで、その侵入をブロックして口腔内で無毒化している。ドライマウスが進行している状態だと、ウイルスや菌に無防備となるため、体内への侵入を許し疾患に罹患する危険性が高まる。

 

 先の新型コロナウイルスのパンデミックを受け、国民の間でマスクが常態化。その結果、口臭を気にする国民が増加した。シャンピニオンや柿渋、茶カテキンなどを配合した口臭ケア用のタブレットやサプリメント、マウスウォッシュのニーズが高まった。最近では、タブレットタイプの歯磨き剤、スプレータイプの口腔ケア製品のヒットを受け、編集部にもこうした製品を作れる受託メーカーを紹介して欲しいとの問い合わせが増えている。実際、厚生労働省の薬事工業動態統計調査によると、2024年の「口中清涼剤」の国内出荷金額は、 前年比5.9%増の207億8,745万円、「薬用歯みがき剤」は同5.1%増の1,706億8,754万円と、好調な動きを示している。

 

 口や歯、歯ぐき、舌苔などをキーワードとする機能性表示食品の受理件数も7月9日時点で43品(撤回除く)。昨年同時期より10品増加した。機能性関与成分は、還元型コエンザイムQ10やエピガロカテキンガレート、緑茶フッ素、ゲッケイジュ葉エキスをはじめ、ラムノーザス菌L8020株やロイテリ菌、乳酸菌LS1乳酸菌WB21などの乳酸菌群などが見られる。また機能性関与成分以外でも、ミュータンス菌やジンジバリス菌の抑制効果に対するエビデンスを揃えた新素材が増えている。展示会等では、口腔内で溶けるチュアブル、可食フィルムなど、オーラルヘルス素材の摂取に適した剤形を開発して展示する企業も増えつつある。非食品分野でも、唾液分泌量を高めるデータを取得したトラストレックスの口腔マッサージャーが人気のほか、先頃MTGが美顔器の機能を搭載した電動歯ブラシを発売し話題を集めるなど、オーラルヘルス関連商材のバリエーションにも拡大が見られる。

 

 今回の取材・調査では、オーラルフレイルをはじめ、オーラルヘルス対策のサプリメントのメーカーからは、歯科医ルートでは順調な売れ行きとの回答が複数聞かれた。ただ、通販や店販などの一般流通で展開するメーカーでは、口臭ケア商材以外、売れ行きは十分とは言えない状況だった。主な理由として「消費者の認知度がまだ低い」というコメントが多く聞かれた。つづく

 

 

 

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