ZOOM UP【抗糖化】 糖化ストレス対策、新たな概念の登場で次なるステージへ

 2011年に「抗糖ストレス」という概念が登場し、老化対策の大本命として認知が広がる糖化対策。現在では国内に加え、中国や台湾をはじめとした海外からの関心も高く、糖化対策商品に熱い視線が注がれている。糖化研究の第一人者である同志社大学の八木雅之教授は、「研究が推進されたことで糖化を見直す新たな時代に突入した」と話す。特に、食事性の糖化と体内での糖化についてこれまで一括りで語られてきたが、これらを別々に考える必要があると指摘する。抗糖化マーケットの誕生から15年、次なるステージに向けた取り組みに期待が寄せられている。

 

 近年、糖化ストレスは糖とタンパク質の反応という枠を超え、糖類、脂質、アルコール由来のアルデヒドによって誘発される体への負の影響を指す概念へと進化している。今年5月に開催された第30回糖化ストレス研究会では、「食品中の機能性成分の効用を見直す」というテーマのもと、糖化の新たな捉え方が議論された。ここでは食品中AGEsの測定における課題、食品による生体の酸化ストレス応答、コーヒーの健康効果、食品の抗糖化作用をアミノグアニジン(AG)当量で表示する試み、メイラード反応調味料によるおいしさの付与、さらにAGEsの摂取と人類の進化や幸福感など、多面的な観点から研究成果が発表された。従来、糖化を生活者に説明する際はパンや肉の焼き色など、食品の糖化による褐変が例に挙げられることが多かった。また食品中のAGEs摂取が糖化を促進するとの見方もあった。しかしAGEsを多く含む食品を摂取することの生体影響は十分に解明されておらず、報告されている食品中AGEs測定法にも抽出率や定量性の面で課題がある。さらに食品中AGEsの吸収や排泄に関する報告は僅かである。

 

 一方、糖化物のひとつであるメラノイジンを多く含むコーヒーを日常的に摂取する人は、死亡リスクやⅡ型糖尿病の発症リスクが低下していることが報告されている。さらに、醤油や味噌などに代表されるメイラード反応食品は世界中の食文化に深く根ざしている。このように、体の糖化(糖化ストレス)と食品の糖化の影響は別々に考えるべきであり、それぞれの評価法や収支を見直す必要がある。特に生活者に向けて糖化の情報を発信する際には、「糖化=悪」といった単純な構図に陥ることなく、食品の風味や健康効果を含めた多面的な説明が重要である。また、糖化と酸化の違い、皮膚中AGEs測定部位別の意義の違い、食後に上昇する血中アルデヒドの動態とその対策など、今後の研究課題も多い。つづく

 

 

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