特集【β‐NMN】 肌領域以外の機能性表示食品着々と
急成長が続いたNMN市場は、食薬区分5年目を迎え安定期に入ってきた。本紙が健食受託企業を対象に実施したアンケート調査(有効回答125社)では、今年上期(1〜6月)の人気受注素材で、NMNが27票となり、昨年の1位から2位に順位を落としたものの、依然人気原料となっている。一方で今年5月、帝人のグループ会社であるNMNメーカーNOMONが、突然の事業終了を発表。同社は、2019年から製品開発を行うNMNのリーディングカンパニーだ。事業継承先はなく完全撤退となる。また、大正製薬は昨年11月、『NMN taisho』が景表法に基づき措置命令を受けたことで、一時的な販売減は避けられない。中国人富裕層をターゲットにしていた企業も、「中国経済の不況を理由に、販売は減少傾向」と話す。
日本で流通するNMN原料の生産国は、中国が大半で一部は日本。ごく僅かだが英国産も流通しているという。2018年頃までは、原料価格がキロ当たり100万円近くするとも言われたが、年々価格は下落し、今では5万円以下でも販売されている。NMN原料は、NR(ニコチンアミドリボシドクロライド)を基原料に発酵法と合成法に分かれる。合成法は生産性の高さ、遺伝子組換え原料が入らないなどの安全性がある反面、抽出溶媒に日本では非食品に該当する物質が含まれていることもあり、輸入時の入念な検査が必要だ。一方、発酵法は、ビールやホップなどの酵母菌をNRと発酵させることでNMN酵素を生成する。合成法ほど量産には向かないが、日本人には酵母という食歴のある原料を使っていることから安心・安全性を訴求できる。本紙が把握できている基原料から日本でNMN原料を製造できる企業は、三菱商事ライフサイエンスとオリエンタル酵母。三菱商事ライフサイエンスは、2022年に大分県の自社工場で、天然のトルラ酵母由来の純国産NMNの製造に成功。原料価格が高額なため、量販向きではないが、こだわりを持つ層やクリニックで売れているという。
中国の主なメーカーは、SYNCOZYME、JARI、BONTACなど。いずれも2020年以前から製造しており、現在はセルマーク・ジャパンや日本バルク薬品らが国内の代理店として原料提案を行っている。またTAメディカル、公知貿易、アスパ・コーポレーション、日本総合医療製薬など、独自ルートで輸入・加工する企業も増えている。 NMN原料は、微細な粉末状で嵩密度が低く、そのままではハードカプセルに充填し辛い。そのため、中国から原料を輸入し、日本で造粒するケースも多い。この工程により「日本製造品」として提供されている。
機能性研究も活発化している。これまで、業界では「NMNはヒト試験が少なくエビデンスに乏しい、何に効くか定め辛い」などの声が聞かれていた。一方、東京大学や慶応義塾大学、静岡県立大学などは、オリエンタル酵母工業や三菱商事ライフサイエンス、阿部養庵堂などの企業と共に、エビデンス研究を進めている。これまで「高齢者の歩行能力」「聴力・持久力の向上」「骨密度低下の抑制」「フレイル予防」などのデータが蓄積されている。昨年5月には、DHCが「NMNの12週間の摂取がエネルギー代謝を安全かつ効果的に高め、血管の硬さを低下させる」についての論文が『Scientific Reports』Top100に選出されたと発表した。今年の抗加齢医学会では、新たな研究発表も控えており、今後の機能性研究は増えていくと予想される。
機能性表示食品では、CloudNineが『Refeelas』で一昨年、NMNを関与成分に肌領域で初受理されて以来、この2年弱で14品まで広がった。同社では、受理後、機能性表示食品のブランド価値が付き、会員以外にも広がり、年間で数千万円の売れ行きという。2024年には、「高齢者の歩く力や握る力を維持する」「中高年の歩行速度の維持」旨の新たなヘルスクレームが受理された。同様のSRを使い、中高年向けの機能性表示食品の届出も増加傾向にある。今年は、新たに、「睡眠の質向上」旨の受理も加わり、原料メーカーには早速多くの問い合わせがあるという。つづく
詳しくは健康産業新聞1814号(2025.6.18)で
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