特集【カロテノイド】 アイケアに加え、 美容 ・ スポーツ用途に拡大

 カロテノイドの機能性研究は各国で行われており、常に新しいエビデンスデータが発表されている。藤田医科大学の藤井亮輔教授らが2021年に発表した研究によると、北海道産南部八雲町の40歳以上の男女約3,000人を対象に、血液中の血清カロテノイド値を測定し、22年間分のデータと死亡率との関係を分析した結果、血清中の総カロテノイド値が25%上昇するごとに、死亡リスクが15%低下し、がんによる死亡リスクは18%、心血管死亡リスクは15%に低下することが確認された。

 

 2022年には、米国立老化研究所がカロテノイドの摂取が認知症の発生リスクを抑えると発表した。同研究所は、45~90歳の米国人男女7,283人を対象に約17年間、血中のカロテノイド類、ビタミンA、C、E量を分析し、ルテイン・ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの血中濃度が高い群は、低い群と比べて認知症の発症リスクが減少することを明らかにした。今年5月に開催されたARVO(視覚研究と眼科学協会)の総会で、Kemin industryのFonseca博士は、「ルテインが健康な思春期青年の黄斑色素密度に与える影響」と題して発表を行った。Fonseca博士は、「これまでの115件のヒト臨床試験により思春期前から思春期の子供は、他の年齢層よりも画面を見る時間が長く、栄養豊富な食品の摂取量が少ない。過剰な画面視聴は長期的な目の損傷と関係していることから、食事やサプリメントからルテインで目を保護する必要がある」と報告した。

 

 市場を牽引するルテイン・ゼアキサンチンは、主にマリーゴールドから抽出されるカロテノイド成分。人気の要因は、スマホ・PC普及による目の酷使緩和と高齢化による加齢黄斑変性に対応したアイケア用途の拡大だ。これらの症状に対するエビデンス量の多さも採用を後押しする。加齢や生活習慣の乱れにより、目の黄斑色素濃度が低下することがわかっており、ルテインは人の目の黄斑色素と同じ構造式を持つことから利用が進んでいる。アスタキサンチンは、ヘマトコッカス藻由来の抗酸化機能に優れた赤色素。活性酸素の中でも毒性の強い一重項酸素に強く作用する特性を持ち、その除去能力はルテインの2.6倍、リコピンの1.6倍とも言われている。優れた抗酸化力が注目され、アイケアだけでなく、スポーツ貧血への有効性、筋重量の維持に対するエビデンスの蓄積も進んでおり、スポーツニュートリション、フレイル対策素材としても注目されている。昨年には、オレンジトマト由来のフィトエン、フィトフルエンが肌ツヤの改善に役立つとのデータをもとに、「透明カロテノイド」として上市された。また、β-クリプトキサンチンは、骨の健康に対する研究が進み、高齢者向け食品に利用が拡大するなど、カロテノイドの活躍の場は年々広がっている。

 

 カロテノイド配合のサプリメントは、通販や実店舗、医科向け、クローズドマーケットなど幅広いルートで人気商品となっている。ロート製薬の「ロートV5」シリーズは、通販、Dgs共に販売が好調で、2024年には累計1,500万個を突破した。ファンケルの『えんきん』は、アスタキサンチン、ルテインを配合するDgS市場でアイケアを代表するサプリメント。2015年発売以来、8年連続売上トップを維持している。医科向けルートでは聖隷浜松病院や井上眼科の門前薬局でルテインのアイケアサプリが売上トップを維持している。

 

 機能性表示食品の受理品数では、ルテインが467品と最も多く、「網膜の黄斑色素を増やす」等のヘルスクレームで、アイケア用途をメインとする。次いでアスタキサンチンが222品で、「目のピント調整機能」に加え「紫外線からの肌の保護」「中高年の一時的な疲労感軽減」など、多岐に亘るヘルスクレームで受理されている。そのほか、クロセチンが60品、リコピンが47品、β-クリプトキサンチン、β-カロテンが13品と続く。インテージ社の「市場実態把握レポート2024」によると、ルテインの市場規模は285億円(前年比10%増)、アスタキサンチンは59億円(同2%減)、リコピンは148億円(同4%減)。主要3原料だけでも約500億円の市場と推計される。つづく

 

 

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